
⚠️ 新規施設の募集は休止中
企業主導型保育事業は、2022年度(令和4年度)以降、新規施設の開設および定員増員の募集を休止しています。現在は既存施設の運営継続・質向上が中心となっています。最新情報はこども家庭庁または公益財団法人児童育成協会にご確認ください。
様々な就労形態に合わせた保育サービスを提供できる企業主導型保育所は、待機児童の解消につながると期待されており、近年急速にその数を増加させています。企業主導型保育所にはデメリットがあると言われていますが、実は多くのメリットもあります。
この記事では企業主導型保育所の特徴、メリット・デメリットについて簡単に説明します。企業主導型保育所に興味のある方のお役に立てればと思います。
目次
企業主導型保育所とは
企業主導型保育所は、2016年に内閣府が主体となって始めた「企業主導型保育事業」の制度のもとで設置される保育施設です。なお、2023年4月のこども家庭庁創設に伴い、所管はこども家庭庁へ移管されています。
企業が自社従業員のために事業所内や周辺施設に保育所を開設し、従業員の多様な働き方に合わせた柔軟な保育サービスを提供できるのが特徴です。子育て支援の充実や待機児童問題の解消にも貢献することを目的としています。複数企業による共同設置も可能で、地域住民の子どもを受け入れる「地域枠」を設けることもできます。
認可外保育所に分類されるものの、認可保育所と同等の助成金を受けられる点も大きなメリットです。
なお、定員11万人分という当初目標が2021年度に達成されたことと、全国的な待機児童数の減少を受け、2022年度(令和4年度)以降は新規施設の募集および定員増員を休止しています。現在は既存施設の運営継続と保育の質向上が事業の中心となっています。
参考:仕事・子育て両立支援事業(企業主導型保育事業 等)|こども家庭庁
企業主導型保育所ができた背景
企業主導型保育所ができた背景として、待機児童問題があります。
保育サービスの不足や多様な働き方への対応不足により、仕事と子育ての両立が難しいという現状を改善するための一つの施策として、「企業主導型保育事業」が創立されました。
事業主拠出金を財源とし、企業の従業員の多様な就労形態に対応した保育サービスの拡大支援や、待機児童問題の改善を目的としています。
事業所内保育所との違い
内閣府の子ども・子育て支援新制度で創設された「地域型保育事業」の一つとして、「事業所保育事業」というものがあります。主に企業が自社従業員のために事業所内に保育所を設置し、従業員や地域の子どもを受け入れるのが事業所内保育所です。
形は企業主導型保育所に似ていますが、事業所内保育所は「認可保育所」であるため、自治体が利用者の選考を行います。
また、対象年齢は0~2才児であることや、定員の1/4は地域枠であることなど、様々な条件が決められています。
企業主導型保育所の特徴
以下では、企業主導型保育所の特徴についてポイントに分けて解説していきます。
企業が自社従業員のために開設する
企業主導型保育所は、企業が自社従業員のために事業所内や周辺施設に開設します。
利用者は企業との直接契約になるので、地域の自治体から認定が下りずに入園できない従業員でも、就労条件等を満たせば利用することができます。
複数の企業が共同で運営してもよい
企業主導型保育所は複数の企業で共同運営・共同利用することができます。単独運営かつ単独利用の場合、自社従業員や周辺地域に入所する園児が少ないと定員割れするリスクが大きくなります。
共同運営や共同利用であれば、自社従業員で入所する子どもが少ない場合でも他社従業員の子どもを受け入れることができるので、入所する園児を確保しやすくなります。
保育事業者型事業として運営する方法もある
企業主導型保育所には、一般企業が設置するものの他に、保育事業者が一般企業と連携して設置する「保育事業者設置型」があります。
「保育事業者設置型」は、5年以上の保育実績がある保育事業者が保育所を設置し、特定の企業と利用契約します。
企業が子ども・子育て拠出金を負担している事業主であれば従業員枠を利用することができます。複数の企業と利用契約できるので、入所する園児の確保がしやすくなります。
定員枠があれば地域の子どもの受け入れも可能
企業主導型保育所は基本的に企業の従業員の子どもを受け入れますが、定員枠があれば「地域枠」として定員の50%以下まで、従業員以外の地域の子どもを受け入れることもできます。「地域枠」は義務ではなく任意ですが、多くの企業主導型保育所が受け入れています。
「地域枠」については2018年3月より弾力措置が講じられており、一定の条件を満たす場合に限り、定員の50%を超過して受け入れることができます。
保育料は一般の認可外保育所より安く設定できる
企業主導型保育所は「認可外保育所」であるため、事業者が保育サービス内容に合わせて自由に設定することができます。
助成金が出ることと、保育料は認可保育所と同程度で利用できるよう年齢別に水準が定められていることもあり、一般の認可外保育所より安く設定されているところが多いです。
さらに、幼児教育・保育の無償化に伴い、3~5歳および住民税非課税世帯の0~2歳児について保育の必要性のある児童が無償化の対象になります。
従業員枠を利用している児童は全て保育の必要性があるものとして取り扱われ、地域枠の場合は自治体から保育認定を受けている児童を保育の必要性があるものとして取り扱われます。
企業主導型保育所の職員配置基準(2026年3月時点)
企業主導型保育所の職員配置基準は以下のように定められています。
●職員数
保育従事者の数は、
・ 0歳児は3人につき1人
・ 1~2歳児は6人につき1人(5人への改善が検討されています)
・ 3歳児は15人につき1人
・ 4歳以上は25人につき1人
とし、その合計数に1人以上を加えた数になります。
●職員の資格
上記職員の半数以上は保育士とし、保育士以外の職員は子育て支援員資格を有しているか、地方自治体が実施する「子育て支援員研修」や公募団体等が実施する研修を受講する必要があります。
保育士の配置基準については下記の記事で詳しく解説しています。
参考:保育士の配置基準とは?施設の形態による違いや計算方法などを紹介
企業主導型保育所の設備基準
企業主導型保育所の設備基準については、原則、認可の事業所内保育事業と同様の基準が定められています。
保育室等について、
・0~1歳児は乳児室 1.65㎡/人、ほふく室 3.3㎡/人
・2歳児以上は保育室又は遊戯室1.98㎡/人
の広さが必要です。
屋外の遊戯場についても、2歳児以上 3.3㎡/人の広さが必要です。
そのほか、給食に関する事項、健康管理・安全確保に関する事項等、厚生労働省が定めている「認可外保育施設指導監督基準」を遵守する必要があります。
企業主導型保育所のメリット
以下では、企業主導型保育所のメリットについて詳しく解説します。
従業員の働き方にあわせた柔軟な対応が可能である
企業主導型保育所は、自由に開園時間・曜日を設定できます。
そのため、経営方針や利用者のニーズに合わせて、1日に2~3時間や週2~3回だけの短時間保育、休日や早朝・夜間保育、子どもが病気になった際の病児保育など、従業員の働き方に合わせた柔軟な対応が可能です。
迅速に開所できる
認可外である企業主導型保育所は、認可保育所と比べて設置基準を満たしやすく、迅速に開所できるところがメリットです。
公益財団法人児童育成協会の発表によると、企業主導型保育事業の助成決定施設数は年々拡大してきました。事業開始直後の2018年3月末時点では2,597施設・定員約6万人分でしたが、2022年度には4,449施設・定員約10.5万人分まで増加しています。
その後、新規募集の休止により施設数はやや減少し、直近の2025年3月末時点では4,361施設・定員103,763人分となっています。
補助金が出る
企業主導型保育所は認可外施設でありながら、運営費・設備費・施設利用給付費など、認可施設並の補助金を受けられます。
補助金は、地域・定員・年齢・開所時間・保育士比率などの決められた区分における基準額をもとに助成額が算出されます。さらに、延長保育や夜間保育、病児保育、その他サービス・環境改善などの取り組みに対して加算がつきます。
税制の優遇がある
2017年度税制改正において、企業主導型保育事業の活用促進のために固定資産税等の課税標準の特例措置が講じられました。
その後、段階的に延長が行われており、現在は2017年4月1日〜2025年3月31日(令和7年3月31日)の期間に初めて運営費の助成を受けた事業者が対象となっています。
特例措置の内容は、固定資産税および都市計画税については助成開始後5年間、課税標準を価格の1/2を参酌して1/3〜2/3の範囲で軽減、事業所税については助成を受けている間、課税標準を価格の1/4とするものです。
人材確保につながる
時短パートや夜勤などの働き方をしている従業員は、通常の保育園では保育時間が合わずに離職せざるを得ない場合もあります。しかし、従業員の働き方に合った保育サービスを提供できる企業主導型保育所であれば、従業員は自分の働く時間に合わせて子どもを預けることができるため、離職する必要がありません。
また、働きやすい環境を整えておくと子育て世代の従業員の新規採用がしやすくなり、人材確保につながるメリットもあります。
東京都の独自補助金
⚠️公益財団法人東京しごと財団が「企業主導型保育施設設置促進助成金」として、都内での企業主導型保育施設の開設に必要な備品等の購入経費を助成していましたが、令和4年3月24日をもって申請受付を終了しています。
現在は同助成金の利用はできません。お近くの自治体や関係機関にお問い合わせください。
東京都は企業主導型保育園の促進のために公益財団法人東京しごと財団と連携して、「企業主導型保育施設設置促進助成金」という独自の補助金制度を実施しています。
令和2年度の助成内容では、助成限度額が定員に応じて最大375万円までとなっています。
また、助成対象となる経費は、企業主導型保育施設を設置するにあたって必要な初期費用としての備品等の整備に係る経費です。例として以下の4つが挙げられます。
・安全柵や安全マットなどの事故防止に資する備品
・すべり台、クッション遊具、玩具などの室内遊具
・日常生活用の食器・家具類、厨房用品類などの保育活動に必要な備品
・保育業務支援システム導入に係る初期費用、機器の購入費用等
企業主導型保育所のデメリット
上記では企業主導型保育所のメリットについて解説してきました。次に、そのデメリットについて解説します。
定員割れになることもある
待機児童問題が深刻で多くの保育所が必要になるのは、主に共働き世帯が増加している都心部です。少子化が進んでいる地方では待機児童問題はそう多くありません。
しかし、企業主導型保育所は参入障壁が低い上に認可保育所並の助成金が出るため、地方で開設する企業も多くいます。そのため、自社従業員以外での利用者がおらず、定員割れになるといったことも起きています。
定員割れを防ぐには、設置地域周辺のニーズをよく調査することが必要です。
開業時のコストがかかる
企業主導型保育所の施設整備費の補助金は、補助対象と認められた工事費の3/4が補助されますが、必要なタイミングで補助金が支給されるわけではありません。補助金が全額振り込まれるのは施設の完成後であるため、その前に施工費用を支払うこともあります。
また、運営費の補助金はあくまで開園後の経費が対象であり、運営開始前の備品購入や人件費などの開業費は補助対象になりません。そのため、施設の開業時にはコストがかかります。
事業所などが複数あると公平な設置は難しい
全国の広範囲に複数の事業所がある企業の場合、全ての事業所で保育所を開設することが難しく、全ての従業員を対象とした福利厚生にできないこともあります。
また、例えば都心のオフィスビル内にある保育施設では屋外に遊び場がないなど、確保できる施設の広さなどの違いによって同一の保育サービスを提供できない場合もあります。
企業主導型保育所に代わる子育て支援の選択肢
⚠️最新の制度情報は変更される場合があります。こども家庭庁または公益財団法人児童育成協会にて最新情報をご確認ください。
企業主導型保育事業は2022年度以降、新規施設の開設および定員増員の募集を休止しており、新たに同制度を活用した保育所を設置することはできません。
従業員の子育て支援や採用力強化を検討している企業には、以下のような選択肢となります。
既存の企業主導型施設との提携・共同利用契約
すでに助成を受けて運営している企業主導型保育施設と共同利用契約を結ぶことで、自社従業員の子どもが優先的に利用できる枠を確保できます。
自社で施設を設置・運営するコストやリスクを負わずに従業員への子育て支援を実現できる、現実的な選択肢のひとつです。
認可の事業所内保育事業への移行・新設
市区町村の認可を受けた「事業所内保育事業」は、地域型保育事業の一環として自治体によっては引き続き新設が可能な場合があります。
企業主導型保育所と異なり自治体との調整が必要ですが、認可施設として安定した運営基盤を確保できます。
既存の企業主導型保育施設を事業所内保育事業へ移行・転換することも選択肢のひとつです。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。
くるみん助成金(中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業)の活用
こども家庭庁が所管する「くるみん助成金(中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業)」は、くるみん認定・プラチナくるみん認定を受けた常時雇用労働者300人以下の中小事業主を対象に、子育て支援環境の整備に要する経費を上限50万円で助成する制度です。
保育施設の設置に限らず、育児休業の取得促進・業務負担軽減・所定外労働の削減など幅広い子育て支援施策が対象となります。
企業主導型保育所のような施設設置を伴わない形で、従業員の子育て支援と採用力強化を両立できる制度として注目されています。
詳細はくるみん助成金ポータルサイトをご確認ください。
ベビーシッター補助・保育所契約の活用
企業主導型のベビーシッター利用者支援事業(ACSA割引券)など、施設を設置しない形での従業員の子育て支援も引き続き利用可能です。
近隣の保育事業者と連携した「保育事業者設置型」の枠組みを活用することも検討できます。
ICTシステムの整備による既存施設の運営効率化
すでに企業主導型保育施設を運営している法人にとって、新規募集が休止している現在は「いかに既存施設の運営の質を高め、選ばれる施設であり続けるか」が経営上の重要課題になっています。
保育ICTシステムの導入は、登降園管理・連絡帳・請求・シフト管理といった日常業務を効率化し、保育士の負担を軽減するとともに、保護者満足度の向上にも直結します。
また、企業主導型保育事業費補助金には「運営支援システム導入加算」が設けられており、中小企業事業主が設置する施設を対象に、保育業務支援システムの導入費用等が助成対象となっています。
補助金を活用したICTシステム導入についても、ぜひご検討ください。
参考:保育園のICTシステム導入補助金とは?対象や要件、手続きの流れまで解説
参考:保育ICT推進加算とは?新設の要件・加算額・補助金との違い・準備すべきことを解説
まとめ
企業主導型保育所は、従業員の多様な働き方に合わせて保育サービスを提供できる施設として、子育て支援や待機児童問題の解消方法のひとつとして期待されています。
定員割れのリスクや開設コストがかかるなどのデメリットがありますが、子どもを預けやすい保育所を開設することで、従業員の離職防止や新規採用しやすいなどのメリットもあります。
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