
7月は、個人面談の時期を迎える園も多い頃。そこで増えるのが、保護者からのこんな一言。
「うちの子、他の子よりちょっと…遅いですか?」
「みんなトイレ行けるのに、うちはまだで…」
この“比べる問い”に、どう答えたらいいのか。保育士にとっては、毎年ぶつかる【保護者支援の壁】のひとつかもしれません。
目次
「比べたくないのに、比べちゃう」ママの苦しさ
本当は、わが子のことを信じていたい。でも、同じクラスの子とどうしても比べてしまう。「うちの子だけが、取り残されているような気がする…」
その思いの裏には、「うちの子、大丈夫?」という不安と、「私の育て方、間違ってるのかな?」という自責の気持ちが、入り混じっています。
保育士が“正論”で応じてしまうと…
保育士としては、励ましたい気持ちで、
- 「個人差ありますから!」
- 「焦らなくて大丈夫ですよ〜」
と声をかけることもあります。
でも、それが“届かない”こともある。なぜなら、ママたちは「正しさ」ではなく、「わかってくれる安心感」を求めているから・・・

よくある場面:主任と新人の会話
- A先生(新卒保育士)
- ますみ
A先生:「今日、〇〇くんママに“他の子はもう昼寝布団自分でたためるのに…”って言われて…」
ますみ「そっか、その時なんて答えたの?」
A先生:「“その子のペースがありますよ”って言ったんですけど…お母さん、ちょっと寂しそうで」
ますみ:「うん、それね、正しいのだけれど“共感”が少し足りなかったかも」
A先生:「共感…?」
ますみ:「“比べたくないのに比べちゃってる自分”を責めてる可能性もあるよ。“わかります、その気持ち…”って、まず気持ちに寄り添ってあげると、安心して話せるようになるんだよ」

寄り添いの「ひと言」が関係性を変える
たとえば…
- 「〇〇くん、昨日は一人でやってみようとしてましたよ」
- 「△△くんも実は、去年の夏から急にできるようになったんですよ」
そんな“成長の物語”をさりげなく伝えるだけで、ママたちは「うちの子にも、タイミングがあるんだ」と思えるようになります。
保育士が“寄り添いの言葉”を育てるには
面談や日々の保護者対応で、うまく言葉が出てこない保育士。でも、それは「スキルがない」のではなく、「どんな言葉が“支え”になるかの実例」を知らないだけかもしれません。だからこそ、園全体で、
- 実際の対話を振り返る場をつくる
- 「この言葉、よかったよね」を共有する
- 「どう答えたらよかったかな?」と一緒に考える
そんな「言葉の育ち合い」ができると、保育士はどんどん自信を持ち始めます。
最後に:比べてしまうママも、育っている
「比べないようにしたいけど…」そう思いながら揺れるママたちも、また、育っている途中。私たちがかける一言、“そのままで大丈夫だよ”というまなざしが、子どもと同じように、保護者を支える心の栄養になります。
☘️この夏、寄り添い力を育てる園づくりを応援しています!
この「保護者支援のコツ」シリーズでは、保育士が“保護者との関係づくり”に自信を持てるようになる言葉かけや、対応例を伝える研修も行っています。
「職員に寄り添い型の視点を育てたい」
「新卒や中堅が悩んでいるようで…」
そんな園長先生、主任の皆さま、ぜひ一度ご相談ください。
プロフィール:田村ますみ(たむらますみ)

保育園の育成トレーナー・研修講師として、保育士のスキルアップやチーム力向上を支援。園長経験を活かし、現場で役立つ実践的な研修を行う。自身の子育てや、不登校の子を支えた経験を通じ、保護者対応や子どもの心に寄り添う関わり方を伝えることが得意。一般社団法人「チェリッシュ」代表として、子育て支援にも尽力。
コーチングや心理学の専門資格を持ち、保育士が自信をもって子どもと向き合える環境づくりをサポートしている。