不適切保育の事例が次々と明るみになっている昨今。保育の質を上げて、子どもたちの成長に貢献するためには何ができるでしょうか? このコラムでは、OECD世界5大幼児カリキュラムの1つに選ばれた「ハイスコープ」から、みなさんの保育に役立つアイデアを紹介します。
目次
本当に価値のある玩具とは?
保育室に置かれる玩具は、子どもたちの遊びを広げ、経験や学びを増やしてくれるものです。では、どのような玩具を選んだらよいのでしょうか?
ハイスコープが推奨しているのは、さまざまな使い方ができる「オープンエンド素材」です。
オープンエンド素材とは?
既製品の玩具は、使い方が予め決められて設計・製造されたものが多いです。
オープンエンド(open-ended)素材は、さまざまな使い方ができ、子どもたちがさまざまな探索や発見をすることが可能になります。
オープンエンド素材
本物 / 日用品 / 自然物 / 廃材
家庭で大人が日常的に使っているアイテムには、家庭で子どもたちが使おうとすると「ダメ!」と言われてしまうものもあるでしょう。
しかし、そのようなアイテムこそ子どもたちの興味や遊び心を刺激し、大人のまねをして使ってみたり、大人が考えつかないようなユニークな使い方をしてくれる可能性を秘めています。
家庭で不要になったアイテムや廃材を活用することは、子どもたちの遊びを広げるだけでなく、コストダウンにもつながります。
ハイスコープは、アメリカや日本以外の国でも実践されていて、日本よりも必ずしも経済的に豊かでない国でも子どもたちの学びや発達を促しています。子どもにとって本当に必要なものは、決して高価な玩具とは限りません。
ハイスコープの世界ネットワーク
引用元:https://highscope-japan.org/know/network/
家庭から不要になった日用品や廃材を寄付してもらうことは、忙しい保護者により簡単な方法で保育参加をする機会を提供することにつながります。また、家庭のものが保育環境にあることで、子どもたちに安心感がもたらされます。保育者にとっては、家庭や子どもたちの家庭での経験を理解する手がかりとなります。
外遊びで見つけた自然物は、無料で手に入る貴重な素材です。既製品は、プラスチックや限られた材質でできたものが多いですが、自然の中には、さまざまな感触、におい、色合いなど、子どもたちの感覚を刺激する素材が無限にあります。
そのような素材を自分なりに使ってみる中で、子どもたちはモノの性質を理解し、算数、理科、芸術などの領域の基礎を学びます。
多様性を反映した保育環境
保育室に置かれているものは、大人が何を大切にしているかのメッセージになります。
保護者が従事するさまざまな職業の作業着や、さまざまな家族構成を反映した家族写真を置くことは、それらを大切にしていることを子どもたちやその家族に示してくれるとともに、子どもたちが世の中にある職業や家族の形を理解するのに役立ちます。
外国籍の家庭がある場合は、その国の本、衣装、キッチン用品、人形などを置いたり、その国の音楽を活動で使ったり、給食やおやつにその国のメニューを取り入れることで、その国の文化を大切にしているというメッセージになり、子どもたちが異文化理解をするきっかけになります。
世の中にはさまざまな国籍、人種、ジェンダーの人たちや、障がいによって特別な装具を必要とする人たちもいます。そのような多様性を保育室に置く教材・素材に反映することで、子どもたちは遊びを通じてそのような人たちに対して親しみや思いやりを持つようになり、現実世界で遭遇しても偏見を持たなくなるでしょう。
また、子どもたちに本を選ぶ際には、ジェンダー、人種、職業選択、家族構成などに固定概念がないものを選ぶように心がけましょう。
写真提供:みらいく保谷園、みらいく高松2丁目園、みらいく高松園、みらいく徳持園、みらいく木月園、みらいく有明園、みらいく久が原園、東京愛成会
プロフィール:星野智実(ほしのともみ)
米国ハイスコープ教育研究財団
認定トレーナー
https://highscope.org/
<活動実績>
HighScope Japan 講師
https://highscope-japan.org/
みらいく保育園
ハイスコープ導入支援
https://www.miraiku-h.co.jp/
みらいくLab 所属
https://miraiku-lab.com/