ハイスコープで明日からはじめる質の高い保育 【第1回】ハイスコープのキホンとアクティブラーニング

不適切保育の事例が次々と明るみになっている昨今。保育の質を上げて、子どもたちの成長に貢献するためには何ができるでしょうか?このコラムでは、OECD世界5大幼児カリキュラムの1つに選ばれた「ハイスコープ」から、みなさんの保育に役立つアイデアを紹介します。

ハイスコープとは?

「ペリー就学前プロジェクト」という50年以上の研究によって、就学期から成人期に至る生涯に渡る教育的・社会経済的な効果が証明されたエビデンスのある幼児教育カリキュラムです。

ハイスコープのメリット

幼児教育の教育的・社会経済的な効果
 ・就学環境へスムーズに適応できる
 ・より感情的に成熟し、自己コントロールができる
 ・大学進学率が高い
 ・成人後、安定した家庭環境を作ることができる
 ・将来的に、より安定した雇用とより高い所得が得られる

引用元:https://highscope-japan.org/know/aboutus/

ハイスコープのなかみ 

引用元:https://highscope.org/our-practice/preschool-curriculum/

上の図は、ハイスコープの全体像を示した「学びの輪」です。

●大人と子どもの相互関係大人が子どもにどのようにかかわって学びを支えていくかのアプローチ
●学びの環境教室の構成の仕方、そこに置くものや収納方法
●スケジュール・ルーティン
(デイリールーティン)
子どもの主体性、集団性、新しい経験の機会をバランスよく取り込んだ1日の流れ(日課)
●観察
アセスメント
子どもの観察に基づいた発達評価や保育計画、施設での取り組みや運営の評価

これらの4つを大人の責任として実践することで、質の高い教育を実現します。学びの輪の中心には「アクティブラーニング」があり、ハイスコープが一番アクティブラーニングを大切にしていることを示しています。

アクティブラーニングとは?

子どもは、大人からただ一方的に情報を与えられるだけでは必ずしも興味を持って学ぼうと思わないものです。パートナーである大人にサポートされながら「人」「モノ」「出来事」「アイデア」と直接的な体験をすることで、自分の興味・関心に基づいた深い学びが得られます。アクティブラーニングになるためには、次の5要素が不可欠です。

アクティブラーニングの5要素

● 教材・素材
 さまざまな使い方ができ、種類が豊富で、多様性を反映している素材がある

● 操作
 実際に手に取り、自由に調べたり、組み合わせたり、形を変えて遊ぶ中で子どもが発見できる

● 選択
 子どもが何を使って、どこで、誰と、どのように遊ぶかを自分の興味に基づき選んで計画できる

● 子どもの言語と思考
 子どもが言葉やジェスチャーを使って自分の考えを表現したり、新しいアイデアを取り入れられる

● 大人の足場かけ
 大人は、子どもが今持っている力を支えながら、次の発達段階に進めるように緩やかに後押しする

アクティブラーニング実践例 ~こいのぼり制作~

写真提供:みらいく高松園

上記の写真は、保育園の5歳クラスで子ども達が制作したこいのぼりです。1人1人異なる素材を使い、個性あふれる表現がされています。ここに至るためには、以下のステップがありました。

①保育室にこいのぼりの実物を貼り、子どもが自由に見たり触れられるようにする操作
②外遊びの際にこいのぼりを見る操作
③こいのぼりへのイメージが膨らんだところで、制作に使う素材を子どもに選ばせる(選択肢をたくさん与える)教材・素材、選択
④それぞれが選んだ素材を使ってこいのぼり制作、子ども達からは「鱗がついてたな」「5匹にしよう」「紫がいいな」などの発言があった子どもの言語と思考
(事前にこいのぼりの実物を見ていたことが言語や思考への刺激に繋がったかもしれません)

①~④の各ステップで大人は子どもをサポートしながら足場かけを行いました。

このように、アクティブラーニングを取り入れることで個性あふれるこいのぼり制作へと繋がりました。みなさんも、制作や日々の活動にどのようにアクティブラーニングを取り入れられるか、ぜひ考えて実行してみてください!

プロフィール:星野智実(ほしのともみ)

米国ハイスコープ教育研究財団 
認定トレーナー
https://highscope.org/

<活動実績>
HighScope Japan 講師
https://highscope-japan.org/

みらいく保育園
ハイスコープ導入支援
https://www.miraiku-h.co.jp/

みらいくLab 所属
https://miraiku-lab.com/

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