保育所保育指針とは?最新版がいつなのかや改定ポイントを紹介

保育の現場で重要な指針となる「保育所保育指針」。これは保育の基本理念や内容、職員のあり方までを国が定めたガイドラインです。

この記事では、最新版の改定時期や背景、5つの改定ポイントをはじめ、子どもに育ってほしい「10の姿」や保育環境・子育て支援との関係まで、現場に役立つ視点から紹介します。

保育所保育指針とは?

保育所保育指針は、保育の質を確保・向上させるために国が定めたガイドラインです。保育の基本理念、年齢別の保育内容、保育士の職務などが体系的に示されており、保育所で行われる教育と養護の在り方を明確にしています。

この指針は、保育士など現場の職員にとっての業務の基準であると同時に、保護者や地域社会にとっても、保育の目的や方法を理解するための重要な資料です。子どもが健やかに育つために必要な環境や支援の方針が具体的に記されており、保育の実践における共通の土台となっています。

また、指針は社会や家庭の変化、保育ニーズの多様化に対応して定期的に見直されており、現代の子どもたちに適した保育の実現を支えています。保育所保育指針を正しく理解することは、保育士だけでなく、子育てに関わるすべての人にとって重要です。

参考:厚生労働省「保育所保育方針」

保育所保育指針の最新版はいつごろ改定された?

保育所保育指針は、保育の質を維持・向上させるための基準として、社会の変化に応じて定期的に改定されています。現行の最新版は、2017年に改定され、2018年4月1日から施行されています。

この改定では、乳児・1歳以上3歳未満児の保育内容の充実化、保育所を幼児教育施設として積極的に位置づける、子どもの健康や安全への配慮と大きな災害に対する備え、子育て支援の重要性の記載、保育士をはじめとする職員のキャリアパスと研修の実施などが盛り込まれました。

背景には、下記の高まりといった社会構造の変化があります。

  • 核家族化
  • 共働き家庭の増加
  • 発達支援のニーズ

これらに対応するため、指針は保育実践の具体的な方向性を示す役割を果たしています。

今後も保育所保育指針は、子どもを取り巻く環境や社会の動向を反映しながら見直される予定です。保育に携わるすべての人は、最新版の内容を把握し、実践に活かすことが求められます。

保育所保育指針の5つの改定ポイント

保育所保育指針は、保育の質を向上させるために定期的に見直されており、最新の改定では特に重要な5つのポイントが挙げられます。これらの改定は、保育現場における実践をより効果的にするためのものであり、保育士や保護者にとっても重要な指針となります。

ここでは、保育所保育方針の5つの改定ポイントを紹介します。

1. 総則の見直しで「養護」の重要性が強調されるようになった

2017年の保育所保育指針の改定では、「養護」の重要性がこれまで以上に明確に位置づけられました。従来は教育的な側面に重点が置かれていましたが、今回の見直しでは、子どもの心身の健康と安心を支える「養護」が保育の基盤であることが強調されています。

具体的には、保育士が子どもの生活全体に目を配り、安全な環境づくりや情緒面への配慮を日常的に行うことが求められます。例えば、安心して過ごせる雰囲気をつくること、日々の関わりの中で信頼関係を築くことなどが、保育の質を高めるうえで不可欠とされています。

この改定により、保育士は教育者であると同時に、子どもの心に寄り添うケアの担い手としての役割も再認識されました。今後は、養護の視点を土台とした保育実践が、保育現場全体でより一層求められるでしょう。

2. 保育内容が年齢別でより細かく整理された

2017年の保育所保育指針の改定では、保育内容が年齢ごとにより明確に整理されました。これにより、各年齢の発達段階に応じた保育のあり方が示され、子どもの特性に即した対応がしやすくなっています。

具体的には、乳児期には情緒の安定や感覚的な遊びを重視し、幼児期には言語や社会性の発達を促す活動が体系的に整理されました。例えば、乳児には安心できる関わりや感覚遊びを、幼児には集団での協働やルールのある遊びが推奨されています。

こうした整理により、保育士は子ども一人ひとりの発達に合わせた支援を計画・実践しやすくなり、保育の質の向上につながります。また、保護者にとっても、子どもの発達段階を理解しやすくなり、家庭での関わりにも役立つ指針となります。

3. 健康・安全に関する内容がより実践的になった

2017年の保育所保育指針の改定では、健康・安全に関する項目がより実践的な内容へと見直されました。これにより、日常の健康管理や事故防止の対応について、現場で役立つ具体的な方法が明示されるようになりました。

例えば、子どもの体調変化への気づき方や応急対応、事故を未然に防ぐためのチェック項目などが整理され、保育士が自信を持って実践できる体制が整備されています。

また、感染症対策や災害時の行動手順などについても、対応フローや注意点がより明確になりました。

この改定により、保育士は子どもの健康と安全を守るための知識と判断力を高め、緊急時にも冷静に対応できることが求められています。保育所が安全で安心な生活の場であるために、健康・安全の実践力が今まで以上に重視される内容となっています。

4. 子育て支援において保護者との協働が明確化された

2017年の保育所保育指針の改定では、子育て支援における保護者との連携がより重視されるようになりました。従来は保護者への情報提供や相談が中心でしたが、改定後は保育所と保護者が協働し、共に子どもの育ちを支える関係づくりが明確に示されています。

具体的には、子どもの発達状況や日常の様子を保育士と保護者が共有し合うことで、家庭と保育所の連携を強化し、子どもに一貫した支援を提供することが求められています。また、保護者が参加できる学習会や意見交換の場を設け、子育てへの理解を深める機会をつくることも推奨されています。

さらに、保護者の声を保育所運営に反映させる体制づくりも重要視されており、家庭と保育所が協力し合う仕組みが整備されています。こうした協働の強化は、子どもの育ちを支える基盤をより確かなものとし、保育の質の向上にもつながります。

5. 職員の資質向上に向けた体制整備が求められるようになった

2017年の保育所保育指針の改定では、保育の質を高めるために、職員の専門性向上とそれを支える体制づくりの必要性が強調されました。保育士が子どもの発達に応じた支援を行うには、最新の知識や技術を継続的に学ぶことが不可欠です。

具体的には、定期的な研修の実施やキャリア形成支援の充実が求められています。また、職員同士が日常的に連携し、保育に関する課題を共有・解決できる環境づくりも重視されています。チーム保育の中で専門性を活かし合うことは、実践の質の向上に直結します。

加えて、保育士の労働環境の改善も重要な視点です。業務の効率化や負担軽減を進めることで、職員が安心して子どもに向き合える体制が整います。こうした取り組みを通じて、職員一人ひとりの資質が高まり、結果として子どもたちに提供される保育の質も向上することが期待されています。

保育所保育指針の「10の姿」とは?就学前に育てたい力

保育所保育指針では、子どもたちが就学前に育てたい「10の姿」が示されています。これらは、子どもたちが健やかに成長し、社会で生きていくために必要な力を育むための指針となります。

ここでは、保育所保育方針の10の姿の具体的な内容を紹介します。

1. 健康な心と体

「健康な心と体」は、保育所保育指針が掲げる「10の姿」の中でも、すべての学びと成長の土台となる重要な要素です。子どもが安心して生活し、主体的に活動に取り組むには、心身の健康が不可欠です。

指針では、子どもが自分の体を大切にし、基本的な生活習慣を身につけられるよう支援することが求められています。具体的には、バランスの良い食事や十分な休息・運動の確保、衛生習慣の定着など、日常生活の中で健康を意識した保育が重視されます。また、心の健康にも配慮し、安心できる人間関係や穏やかな保育環境を整えることも重要です。

さらに、遊びは心と体の発達を促す大切な手段です。体を動かす遊びだけでなく、友達とのやりとりやごっこ遊びを通して、心の安定や社会性の育成にもつながります。

2.自立心

自立心は、子どもが自分で考え、判断し、行動する力の基盤となる重要な力です。保育所保育指針では、この自立心を育てるために、子どもが主体的に行動できる環境の整備と適切な支援が求められています。

自立心は、単に「一人でできる」ようになることではなく、自分の意志を持ち、選択や決断を重ねる中で培われます。たとえば、遊びの内容や友達との関わり方を自分で選び、試行錯誤する経験が、自立への第一歩となります。また、失敗や葛藤の経験も重要であり、大人はその過程を尊重しつつ、必要に応じてサポートを行うことが求められます。

さらに、保育士自身の関わり方も重要です。子どもの意見を尊重し、自立を促す声かけや姿勢を持つことで、子どもは「自分はできる」「やってみたい」という意欲を持ちやすくなります。

3.協同性

協同性は、他者と関わりながら協力し、共に目的を達成する力です。保育所保育指針では、子どもが遊びや日常生活の中でこの力を自然に育めるよう、具体的な関わりの場や働きかけを行うことが求められています。

例えば、友達と一緒におもちゃを片付けたり、グループで製作活動やごっこ遊びを行ったりする中で、子どもたちは互いに助け合うことや、相手の意見に耳を傾ける姿勢を学んでいきます。こうした経験を通じて、自己主張と他者尊重のバランスが自然と身についていきます。

保育士には、協同性が育まれる場面を意図的に設けることが求められます。遊びの中での役割分担や、トラブルを子ども同士で解決するよう促すことも、その一例です。また、大人自身が協力的な姿勢を示すことで、子どもにとっての具体的なモデルとなります。

4.道徳性・規範意識の芽生え

道徳性や規範意識は、子どもが社会の中で他者と関わりながら適切に行動するための基礎となる力です。保育所保育指針では、子どもが善悪を判断し、自分の行動に責任を持つ意識を育てることが重視されています。

この力は、日々の遊びや生活の中で、相手の気持ちを考える体験や、ルール・約束を守る経験を通じて育まれます。例えば、順番を待つ、謝る、助け合うなどの行動を積み重ねることで、子どもは自然と社会的なマナーや道徳的な考え方を身につけていきます。

また、保育士や大人の関わり方も重要です。子どもの前で一貫した言動や誠実な態度を示すことが、子どもにとっての行動モデルになります。自分の行動が他人にどのような影響を与えるかを考える力を育てるためにも、大人との信頼関係が欠かせません。

道徳性・規範意識の芽生えは、社会の一員としての自覚を育てる第一歩です。保育の現場では、子どもが安心して他者と関わり、自分の行動を見つめ直す機会を意識的に設けていくことが求められます。

5.社会生活との関わり

社会との関わりを持つことは、子どもの社会性や人間関係の基礎を築くうえで欠かせない要素です。保育所保育指針では、子どもが社会の一員として自覚を持ち、他者との関係を築く力を育むことが重視されています。

具体的には、日常の遊びや協力活動を通じて、子どもはコミュニケーションの取り方や集団でのふるまいを学びます。また、保育所が地域の行事や交流活動に参加することで、子どもたちはより広い社会とのつながりを体験し、多様な価値観や考え方に触れる機会を得られます。

こうした経験は、他者を尊重する態度や、ルール・マナーを守る意識を育てる土台となります。子どもは自分とは異なる考えを受け入れる柔軟さや、集団の中での自己表現の仕方を学びながら、社会的な適応力を身につけていきます。

6.思考力の芽生え

思考力の芽生えは、子どもが自ら疑問を持ち、考え、解決しようとする力の基礎を育む重要な要素です。保育所保育指針では、知識の習得ではなく、体験を通じて「考える力」を伸ばすことが重視されています。

例えば、ブロックで構造を試行錯誤したり、絵本を読みながら物語の展開を想像したり、自然の中で「なぜ?」と感じたことを調べたりする活動が、思考力を育てるきっかけになります。こうした体験は、子どもの好奇心を刺激し、自分なりの考えを持つ姿勢を育てます。

また、保育士との関わりも不可欠です。子どもが考えを深められるような質問を投げかけたり、意見を尊重して聞き取ったりすることで、思考の広がりを支援します。自分の考えを言葉で伝える機会は、思考力とともに表現力や対話力の向上にもつながります。

7.自然との関わり・生命尊重

自然との関わりは、子どもが生命の大切さや環境への関心を育むうえで欠かせない経験です。保育所保育指針では、身近な自然と触れ合う活動を通じて、子どもが生命を尊重し、自然に感謝する心を育てることが求められています。

例えば、草花や野菜を育てる、昆虫を観察する、季節の移ろいを感じるといった活動は、自然の仕組みや命の循環を学ぶきっかけとなります。こうした体験を重ねることで、子どもたちは身の回りの自然環境に対する関心や、自分が生きている世界への理解を深めていきます。

また、自然は感性や創造性を刺激する場でもあります。風の心地よさや雨の音、木々の揺れなどに触れることで、五感が豊かに育ちます。さらに、屋外での遊びは身体をしっかりと動かす機会となり、心身の健やかな成長にもつながります。

8.数量や図形・文字などへの関心

数量や図形、文字への関心は、子どもが将来的に数学的思考力や言語能力を身につけるための土台となります。保育所保育指針では、これらに対する興味を自然に引き出す環境づくりが重要視されています。

例えば、ブロックを並べて数を数えたり、パズルで形の違いを見つけたり、絵本を通して文字に親しんだりする活動が、数量感覚や図形認識、文字への興味を育てるきっかけとなります。こうした遊びの中で、子どもは自ら発見し、学ぼうとする姿勢を身につけていきます。

保育士は、子どもの関心に応じた教材や活動を用意し、無理なく楽しみながら学べるように支援する役割を担います。重要なのは、教え込むのではなく、子どもが「おもしろい」と感じながら関わる機会を丁寧に積み重ねることです。

また、これらの力は日常生活にも直結します。買い物で数を数える、地図で位置や方向を理解する、看板の文字を読むなど、数量・図形・文字の理解は社会生活に欠かせないスキルです。

9.言葉による伝え合い

言葉による伝え合いは、子どもが自分の気持ちや考えを表現し、他者と円滑に関わるために必要な基礎的な力です。保育所保育指針では、子どもが言葉を通じて思いを伝えたり、相手の話を理解したりする力を育てることが重要とされています。

この力は、単に言葉を覚えることにとどまらず、感じたことや考えたことを自分の言葉で表現し、それに対する反応や対話を通じて育まれていきます。保育士は、日々の関わりの中で子どもの言葉に丁寧に耳を傾け、気持ちに共感しながら対話を重ねることが求められます。

例えば「どう思った?」「どんな気持ちだった?」といった問いかけを通じて、子どもが言葉で気持ちを表すきっかけをつくることができます。そうした経験の積み重ねが、表現する自信や相手とのやりとりの楽しさへとつながっていきます。

また、友達とのやりとりの中で、言葉を使って自分の意見を伝える・相手の話を聞く経験は、協調性や社会性の発達にもつながります。保育現場では、遊びや集団活動を通じて、自然なかたちで言葉を使う機会を豊富に用意することが重要です。

10.豊かな感性と表現

豊かな感性と表現力は、子どもが感じたことや考えたことを自分なりの方法で表すために欠かせない力です。保育所保育指針では、子どもが周囲の環境に対する感受性を高め、自由に表現できるような保育のあり方が重視されています。

この力は、音楽、絵画、造形、演劇などの表現活動を通じて育まれます。例えば、音に反応して体を動かしたり、絵や工作で自分の気持ちを表現したりする中で、子どもは「伝えたい」「つくりたい」という内面の思いを形にする経験を積み重ねていきます。

また、自然や季節の変化、日々の出来事との触れ合いも、感性を育てる重要な要素です。風の音や光の色、草花のにおいなど、五感を使った体験は、子どもの感受性を豊かにし、表現の幅を広げます。

保育士は、子どもの表現を受け入れ、肯定的に関わることが求められます。思いを自由に出せる環境が整うことで、子どもの創造力や自己肯定感も育ちます。

保育所保育指針における「環境」とは?

保育所保育指針において「環境」は、子どもたちの成長や発達に大きな影響を与える重要な要素とされています。この「環境」は大きく分けて人的環境、物的環境、自然や社会の事象の3つの側面から考えられます。

ここでは、保育所保育方針における環境について紹介します。

人的環境|保育士や子どもとの関わりが育む環境

保育所保育指針における「人的環境」とは、子どもと保育士、あるいは子ども同士の関係性を通じて構成される環境を指します。特に保育士との関わりは、子どもの情緒の安定や主体的な学びに深く関わる重要な要素です。

保育士は、子ども一人ひとりの個性や発達段階を理解し、それに応じた関わりを持つことで、安心感と信頼関係を築きます。その信頼があるからこそ、子どもは自分を表現し、新しいことに挑戦しようとする意欲を持つことができます。

例えば、新しい遊びや人間関係に踏み出すとき、保育士が寄り添いながら支援することで、成功体験と自信が育まれます。

また、保育士は子どもの社会的なふるまいを学ぶ手本でもあります。日々の言葉遣いや態度は、子どもたちが友達との関わり方や対話の仕方を学ぶうえでの重要なモデルとなります。さらに、保育士同士が連携し合い、一貫性のある対応をとることで、子どもにとってより安定した保育環境が整います。

物的環境|施設・道具・遊具の工夫で生活を支える

保育所保育指針における「物的環境」とは、子どもが安心して生活し、主体的に活動できるように整えられた空間や道具、設備のことを指します。これらは、子どもの発達段階や興味関心に応じて設計・配置され、日々の遊びや学びを支える土台となります。

例えば、年齢に応じた遊具を配置することで、子どもは自らの発達に合った挑戦を楽しみながら経験できます。安全性と同時に、子どもが自信を持って取り組める環境を整えることが重要です。また、自由に遊びを展開できるオープンスペースや、集中して過ごせる静かなコーナーなど、空間の使い分けによって多様な活動が可能になります。

さらに、子どもが自分で遊具や教材を選び、使うことができるようにすることで、自立心や判断力も育ちます。物的環境は単なる設備ではなく、子どもの思考力・創造力を引き出す重要な要素です。

保育士はこうした環境づくりにおいて、子どもの様子や関心を観察しながら柔軟に調整を行う必要があります。季節やテーマに合わせたコーナーづくり、子どものアイデアを反映させた空間演出なども、学びへの興味を高める工夫の一つです。

自然や社会の事象|自然とのかかわりや地域とのつながりが生きる学びにつながる

保育所保育指針における「自然や社会の事象」とは、子どもが自然そのものや地域社会と関わる中で、多様な事象や人々、文化に触れ、豊かな学びを得る環境のことを指します。

自然とのかかわりは、子どもの五感・心・体・知性に多面的な刺激を与え、主体的な活動や内面的な成長を促します。例えば、風や雨の音やにおいを感じることで、観察力や想像力などが育まれます。また、草木や虫・動物と直接ふれあうことで、命を大切にする気持ちや共感性の育みにもつながります。

地域とのつながりは、子どもが社会の一員として自覚を深め、人との関係性を築く力を育む上で欠かせない要素です。

例えば、地域の行事や季節のイベントに参加することで、子どもは他者と協力しながら活動する楽しさを知り、思いやりや公共心を育むことができます。また、地域の高齢者やボランティアとの交流は、世代を超えたつながりの中で、社会性や感謝の気持ちを育てる貴重な機会となります。

さらに、保育所が地域と連携しながら子育てを行うことで、保護者や地域住民との理解や協力も深まります。保育所が地域に開かれた存在となることで、子どもたちの育ちを支える環境がより豊かになり、地域全体で子どもを育む「共育」の土壌が育まれていきます。

保育所保育指針と子育て支援|地域・保護者との連携のあり方

保育所保育指針は、保育の質を向上させるために、地域や保護者との連携を重視しています。子どもたちの健やかな成長を支えるためには、保育所だけでなく家庭や地域社会が一体となって取り組むことが不可欠です。

ここでは、保育所保育指針における子育て支援の具体的な連携のあり方について紹介します。

家庭支援|日常的な関わりと子育て不安への対応

保育所保育指針における家庭支援は、保育士と保護者が日常的に関わる中で、子育てに伴う不安や悩みを和らげ、子どもがよりよく育つ環境を家庭とともに整えていくことを目的としています。

保育士は子どもの保育中の様子だけでなく、家庭での生活や保護者の心情にも目を向け、共感しながら支援する姿勢が求められます。このような関係づくりが、保護者に安心感や育児への自信をもたらします。

具体的な支援としては、日々の送迎時や個別面談などを通じて、子どもの発達や様子について情報を共有します。

また、保護者の相談に丁寧に耳を傾け、必要に応じて外部の支援機関や専門家とつなぐ役割も担います。こうした継続的な関わりにより、保護者は孤立を防ぎ、地域全体の子育て支援につながっていくきっかけを得ることができます。

さらに、保育士と保護者が連携することで、子どもは一貫した関わりの中で安心して育つことができます。家庭と保育所が協力し合うことにより、子どもにとっての環境が安定し、より健やかな成長が期待されます。

地域支援|一時預かり・行事・相談支援などの活動

保育所保育指針における地域支援は、保育所が地域社会の一員として、子育て家庭を支える役割を担うことを目的としています。具体的には、一時預かりや地域行事、育児相談などの取り組みを通じて、保護者の負担軽減と地域全体の子育て力の向上を図ることが求められています。

例えば、一時預かりは、保護者が急な予定や就労などで子どもを預けたいときに活用できる支援です。保護者に安心を提供するだけでなく、子どもにとっても新しい人との関わりや体験が得られる機会になります。

地域行事では、保育所と地域の住民が協力してイベントを開催することで、子どもたちは地域とのつながりを自然に感じることができます。こうした体験は、地域の文化を知るだけでなく、子ども自身の社会性を育てる貴重な学びの場となります。

また、育児に関する相談支援も重要な柱の一つです。保育士や専門機関が保護者の悩みに寄り添い、助言を行うことで、保護者は安心して子育てに取り組むことができます。これにより、地域ぐるみで子どもを育てる土台が築かれていきます。

特別支援|虐待や困難家庭への対応体制を強化

保育所保育指針における特別支援は、すべての子どもが安心して成長できる環境を整えるために、ますます重要な役割を担っています。特に、虐待や困難な家庭環境にある子どもへの早期対応や継続的な支援体制の整備は、保育の現場で求められる喫緊の課題です。

保育士は、子どもの行動や家庭環境の変化にいち早く気づき、適切な対応が取れるよう日々の観察や関わりを大切にしています。その上で、福祉機関や医療、行政など関係機関との連携を強化し、必要に応じて相談・通報・支援につなげていく体制が必要とされます。

また、困難を抱える家庭に対しては、継続的なコミュニケーションを通じて保護者と信頼関係を築き、必要な情報提供や相談対応を行うことが大切です。こうした支援は、子どもが安定した生活を送るうえで欠かせない基盤となります。

さらに、保育士自身も専門性を高めるための研修や学びの機会を活用し、虐待の理解や支援の実践力を身につけることが求められます。園全体での意識向上とチームとしての連携により、子ども一人ひとりに応じたきめ細かな支援が可能になります。

まとめ

保育所保育指針は、子どもの健やかな育ちを支えるために、保育の在り方を明確に示す大切な指針です。改定を重ねる中で、養護と教育のバランスや保護者との協働、健康・安全への配慮が強化され、現場の実情に即した内容へと進化しています。

また「10の姿」に象徴されるように、子どもに育んでほしい力が明確化され、保育の質向上につながっています。今後も地域や家庭と連携しながら、実践の深化が求められます。

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