保育士の人材不足・確保対策とは?不足の背景・採用・定着・ICT化のポイントを解説

保育士の人材不足は、多くの保育園・認定こども園が直面する深刻な課題です。少子化が進む一方で共働き世帯は増え、保育ニーズはむしろ高止まりしています。

さらに2024年度からの配置基準改正で必要な保育士数も増え、採用と定着の難しさは一段と増しています。

本記事では、保育士の人材不足が起きる背景や定着しない原因、確保・採用のポイント、そしてICT化による業務負担の軽減までを、園運営の視点から整理して解説します。

保育士の人材不足の現状と背景

まずは、保育士の人材不足がなぜ起きているのかを整理します。需要側・供給側の双方に要因があり、構造的な課題として理解しておくことが、現実的な確保策を考える第一歩になります。

少子化でも保育需要が減らない理由(共働き・延長保育)

少子化が進むなかでも、保育士不足は解消されていません。共働き世帯の増加や保育利用率の上昇によって、保育サービスへの需要が高まっているためです。

特に0〜2歳児の利用が伸びており、低年齢児ほど手厚い配置が求められることも、保育士不足の一因となっています。

加えて、延長保育や一時預かり、土曜開所など提供時間・サービスの幅が広がり、同じ定員でもシフトを回すために多くの人員が要ります。つまり「子どもが減る=必要な保育士も減る」とは限らず、需要はむしろ高止まりしているのが実情です。

離職率の高さと「潜在保育士」約111万人の現状

供給側の課題は、離職の多さと「潜在保育士」の存在です。保育士資格を持ちながら保育の現場で働いていない潜在保育士は、こども家庭庁の資料(令和6年11月)では約111万人とされ、復職が進めば不足解消の大きな受け皿になり得ます。

しかし、業務負担の重さや処遇への不安、ブランクへの心配などから復職に踏み切れない人が少なくありません。

新たに資格を取得する人を増やすだけでは、保育士不足の解消は難しい状況です。離職を防ぐとともに、潜在保育士が復職しやすい環境を整えることも重要になります。

参考:保育士・保育の現場の魅力発信に関する取組について |こども家庭庁

配置基準改正で必要な保育士数が増えている

2024年度の配置基準改正により、施設が確保すべき保育士の人数そのものが増えました。これまでの基準が長く据え置かれてきたなかでの見直しであり、同じ定員でも以前より多くの保育士が必要になります。

基準を満たせなければ受け入れ人数の調整を迫られることもあり、経営にも直結します。改正の具体的な内容と自園への影響は後の章で詳しく整理しますが、まずは「必要人数が増える方向に制度が変わった」という前提を押さえておきましょう。

保育士が定着しない主な原因と経営上の対処ポイント

採用と同じくらい重要なのが定着です。辞める原因を整理し、経営として打てる手を考えます。感覚ではなく、数字で現状をつかむことがポイントです。

書類・記録・保護者対応など業務量の多さ—残業実態の定量把握から始める

離職理由として大きいのが、保育以外の業務量の多さです。

連絡帳や日誌、指導案の作成、毎朝の欠席連絡対応などが積み重なり、休憩が取れない・持ち帰り仕事が出るといった状態が常態化しがちです。

まず取り組みたいのは、残業や持ち帰りの実態を定量的に把握することです。誰が・どの業務に・どれだけ時間を使っているかを見える化すれば、削減すべき業務の優先順位が明確になります。

時間という数字を起点に改善策を検討しましょう。

賃金・処遇面の課題—加算を取り切れているか確認

処遇への不満も離職の要因です。

経営側がまず確認したいのが、受け取れる加算を取り切れているかどうかです。処遇改善等加算をはじめ、要件を満たせば受けられる加算は複数ありますが、申請や要件管理の煩雑さから十分に活用できていない園も見られます。

加算を確実に取得し、その原資を給与や手当に反映できれば、追加の持ち出しを抑えながら処遇を改善できます。まずは取得状況と未取得の加算を棚卸しすることが出発点です。

採用コストと求人競争の激化—媒体ごとのコスト感と競争を避けるチャネル選び

採用面では、求人媒体への出稿が増え、採用単価が上がりやすくなっています。

大手媒体は露出が大きい一方で他園との競合も激しく、費用対効果が見合わないこともあります。

媒体ごとのコスト感を把握したうえで、養成校との関係づくりや職員紹介、自治体の就職支援、自園サイトでの発信など、競争の激しい土俵を避けられるチャネルを組み合わせるのが有効です。

配置基準の改正(2024〜2025年)と人材への影響

ここでは、必要人数が増える直接の要因となった配置基準の改正内容と、自園への影響の見積もり方を整理します。改正のポイントを押さえ、自園で何人不足するかを試算してみましょう。

なお、配置基準については以下の記事で詳しくご紹介しています。

参考:保育士の配置基準とは?施設の形態による違いや計算方法などを紹介

4・5歳児が30対1から25対1へ(約76年ぶりの改正)

2024年度の改正で、4・5歳児の配置基準が保育士1人あたり30人から25人へと見直されました。これは約76年ぶりの基準改善で、子どもの安全・保育の質の確保を目的としています。

経過的な取り扱いはあるものの、基準に沿って配置を厚くすれば、これまでより多くの保育士が必要になります。

特に、4・5歳児クラスを複数持つ園では、その影響は小さくありません。改正は「より手厚い保育」を後押しする一方で、人材確保の難易度を押し上げる要因にもなっています。

3歳児の20対1から15対1への改善

3歳児についても、配置基準が20対1から15対1へと改善されました。3歳児は集団生活への移行期で目配りが必要な年齢であり、配置の手厚さは保育の質に直結します。こちらも基準どおりに配置すれば、従来より多くの保育士が求められます。

4・5歳児の改正とあわせて、幼児クラス全体で必要人数が増える点を踏まえ、年齢別のクラス編成と必要配置を早めに見直しておくことが大切です。

1歳児配置改善加算とICT活用要件

1歳児については、配置を改善した園を評価する加算の仕組みが設けられています。手厚い配置を行うほど評価される一方で、こうした加算や運営の要件には、業務のICT活用が含まれる場合があります。

記録や登降園管理などをデジタル化して効率化することが、加算の取得や手厚い配置の実現を後押しするという位置づけです。配置改善を進めるなら、ICTによる業務効率化とセットで検討すると、現場の負担を増やさずに対応しやすくなります。

なお、1歳児配置改善加算については下記の記事で詳しく解説しています。

参考:1歳児配置改善加算とは?要件・申請方法・メリットを保育施設経営者向けに解説

自園に何人足りないか【試算例】

配置基準の見直しにより、自園で保育士が何人不足するかは、年齢別の児童数をもとに具体的に試算できます。下表は、4・5歳児クラス(各30人)と3歳児クラス(20人)のケースで、旧基準と新基準それぞれの必要人数を比較したものです。

クラス児童数旧基準
(配置基準)
旧基準での
必要人数
新基準
(配置基準)
新基準での
必要人数
増員差分
4・5歳児クラス(各30人)60人30対12名25対14名+2名
3歳児クラス20人20対11名15対12名+1名
合計80人3名6名+3名

このように自園の年齢別児童数をもとに差分を算出すれば、採用計画や加算活用の優先順位を具体的に立てられます。

児童数はクラスごとに変動するため、年度替わりのタイミングで都度見直しておくと、急な採用ニーズにも慌てず対応しやすくなります。

保育士を確保・採用するためのポイント

ここからは、実際に人材を確保・定着させるための打ち手を整理します。費用の持ち出しを抑えつつ効果を出すには、加算の活用と職場環境づくりを軸に据えるのが基本です。

処遇改善等加算を活用する

確保策の土台になるのが、処遇改善等加算の活用です。要件を満たして取得した加算を、給与や一時金、手当として職員に確実に還元できれば、園の追加負担を抑えながら待遇を底上げできます。

重要なのは、加算の取得だけで終わらせず、賃金規程やキャリアに連動させて「頑張りが報われる」仕組みにすることです。

要件管理や実績報告の事務は煩雑になりがちなので、記録や勤怠のデジタル化と組み合わせて、取りこぼしなく運用できる体制を整えましょう。

働きやすい職場環境とキャリアパスを整える

定着のためには、日々働きやすいと感じられる環境づくりが欠かせません。

休憩や有給を取りやすいシフト、相談しやすい人間関係、過度な持ち帰りをなくす業務分担などが基本です。あわせて、リーダーや主任、専門分野への道筋といったキャリアパスを示すことで、長く働く動機が生まれます。

研修の機会を整え、経験を評価につなげる仕組みがあれば、職員は将来像を描きやすくなります。環境とキャリアの両面から「ここで続けたい」と思える園を目指しましょう。

園の魅力づくり

確保策の仕上げが、自園ならではの魅力を明確にすることです。保育方針や園の雰囲気、行事や食育への取り組み、ICT化による働きやすさなど、他園との違いを言語化しておきましょう。

魅力がはっきりしている園は、求職者にも保護者にも選ばれやすくなります。日々の保育の様子や職員の声を発信し、「どんな園で・どんな働き方ができるか」が伝わるようにすることが、結果として安定した人材確保につながります。

採用競争力を高めるための実務ポイント

魅力づくりを採用成果につなげるには、求人の出し方から入職後の受け入れまでを一貫して設計することが大切です。ここでは実務面の具体的なポイントを整理します。

求人票の書き方

求人票は、応募の入り口を左右する重要なポイントです。給与や休日などの条件を正確に示すのはもちろん、配置の手厚さやICT化による残業削減、研修制度といった「働きやすさ」が伝わる具体的な情報を盛り込みましょう。

抽象的な言葉だけでなく、一日の流れや職員の体制が分かる記述があると、求職者は入職後の姿をイメージしやすくなります。条件面で他園に見劣りする部分があっても、自園の強みを正直に・具体的に伝えることが応募につながります。

キャリアパスと研修制度の明示

求職者は、入職後にどう成長できるかを重視します。等級や役職、専門性に応じたキャリアの道筋と、それを支える研修制度を採用段階で明示しましょう。

処遇改善等加算と連動したキャリアアップの仕組みがあれば、給与の見通しも示せて説得力が増します。

「入ってから考える」ではなく、最初から成長の道筋が見えていることが、応募の後押しと入職後の定着の両方に効きます。

採用後のオンボーディング——最初の3か月で離職を防ぐ仕組み

採用できても、入職直後の不安や孤立から早期離職につながることがあります。

特に最初の3か月は重要で、業務の引き継ぎ手順、相談できる先輩(メンター)の配置、定期的な面談などを仕組みとして用意しておきましょう。

ICTで記録やマニュアルを共有できれば、新任職員が業務を覚えやすく、周囲も支援しやすくなります。受け入れ体制を整えることは、せっかく確保した人材を定着させ、採用コストを無駄にしないための投資です。

保育ICT・業務効率化で保育士の負担を軽減する

人材確保と定着の決め手になるのが、業務負担そのものを減らすことです。ここでは、ICT・デジタル化によって保育士が保育に集中できる環境をつくる方法を整理します。

連絡帳・記録・指導案のデジタル化で残業を減らす

保育士の負担が大きい連絡帳・保育日誌・指導案などの書類業務は、デジタル化によって大きく軽減できます。

手書きの転記や重複入力をなくし、テンプレートや過去の記録を活用できれば、作成時間を短縮でき、残業や持ち帰りの削減につながります。

たとえば、ウェルキッズ(WEL-KIDS)のような保育ICTシステムを使えば、連絡帳・記録・登降園管理などを一つにまとめて運用でき、ICTが苦手な職員でも無理なく移行しやすいのが特徴です。

空いた時間を子どもと向き合う時間に充てられるようになり、保育士の定着にも良い影響が期待できます。

複数園の一元管理で運営を効率化する

複数園を運営する法人では、園ごとに情報が分散し、管理の手間や転記ミスが発生しがちです 。

ICTで各園の記録・勤怠・保護者連絡などを一元管理できれば、本部での状況把握や職員配置の調整がしやすくなり、運営全体の効率が上がります。

データがそろっていれば、加算の取得状況や残業の傾向も横断的に確認でき、改善の打ち手を打ちやすくなります。規模が大きい法人ほど、一元管理による効率化の効果は大きくなります。

ICT活用は配置改善加算の要件にもなる

ICTの活用は、業務効率化にとどまらず、加算の要件と関わる場合があります。配置の改善や業務負担の軽減を評価する仕組みのなかで、記録や登降園管理のデジタル化が前提や後押しとなることがあるためです。

つまり、ICT導入は保育士の負担軽減と加算の取得という、二つの効果を同時に狙える施策になり得ます。

配置基準への対応を進めるなら、ICT化を切り離さず一体で検討することで、現場の負担を抑えながら制度に対応しやすくなります。

まとめ

保育士の人材確保は、少子化下でも需要が続くなかで、配置基準改正による必要人数の増加も重なり、年々難しさを増しています。確保と定着のためには、処遇改善や働きやすい職場づくりに加えて、書類業務や保護者対応の負担をいかに減らすかが鍵になります。

ウェルキッズ(WEL-KIDS)のような保育ICTシステムで連絡帳や記録、登降園管理をデジタル化すれば、保育士が子どもと向き合う時間を増やせ、離職防止や採用競争力の強化にもつながります。

まず自園の年齢別児童数をもとに配置基準の差分を試算し、処遇改善等加算の申請状況と1歳児配置改善加算のICT要件を確認するところから始めてみてください。

この記事を共有する