ハイスコープで明日からはじめる質の高い保育【第8回】一人の「やってみたい」が動き出すとき ~スモールグループタイム~

不適切保育の事例が次々と明るみになっている昨今。保育の質を上げて、子どもたちの成長に貢献するためには何ができるでしょうか? このコラムでは、OECD世界5大幼児カリキュラムの1つに選ばれた「ハイスコープ」から、みなさんの保育に役立つアイデアを紹介します。

なぜ「少人数の活動」が質の高い保育につながるのか?

少人数で子どもと向き合ったとき、「この子、こんなことを考えていたんだ」と驚いた経験はないでしょうか。

普段の集団場面では見えにくい一人ひとりの思考の輪郭が、ふっと立ち上がる瞬間があります。

テーブルを囲んで座る数人の子どもたち。同じ素材を前にしていても、手の動きは誰一人同じではありません。

ある子は積み上げ、ある子は並べ、ある子は壊して確かめる。その姿はまるで、それぞれが自分の問いを手の中で確かめているかのようです。

子どもが本当に学びに向かうのは、大人に示された活動に取り組んでいるときではなく、自分の中に「やってみたい」が芽生えたときです。

少人数の活動は、この内側から動き出す力に、大人が寄り添いやすい環境をつくります。

「興味の方向」「取り組み方の違い」「試行錯誤の過程」

こうした学びのプロセスを丁寧に捉えられること。それこそが、少人数の活動が保育の質を高める理由です。

どのようにして「少人数の活動」を支えるのか?

では、その「やってみたい」は、どのように支えられていくのでしょうか。ここで鍵になるのは、大人の関わり方です。

うまくいかず手が止まったとき、すぐに方法を教えるのか。それとも、ただ見守るのか。そのどちらでもない、もう一つの立ち位置があります。

子どもの隣に座り、同じ素材を手に取り、同じ目線で関わる。そして、必要なときにだけ、そっと手を添える。

この関わりがあることで、子どもは安心して試し続けることができます。

学びは、教えられて進むのではなく、支えられて深まっていくものだからです。

ハイスコープが考える「少人数の活動」

ハイスコープでは、この少人数での探究の時間を「スモールグループタイム(以下SGT)」と位置づけ、毎日の日課に組み込んでいます(第5回参照)。人数は6~8人程度が一つの目安とされますが、園の状況に応じて柔軟に構成されます。たとえばクラスが20人の場合は、10人ずつの2グループに分かれてSGTを行い、保育者と子どもが実践的な学習体験を共にします。

ハイスコープの特徴は、大人が指導者ではなく、子どもの対等なパートナーとして関わる点にあります。もちろんSGTでの関わりも同じです。

教え込むのでも、任せきりにするのでもない。子どもの探究を共に歩く支援的な関わりです。

子どもの探究を共に歩くための3つのステップをご紹介します。

またSGTでは、アクティブラーニングの5要素(第1回参照)が意図的に準備され、これらが重なり合うことで、経験はより深い学びへと育っていきます。

さらに特徴的なのが、素材準備の工夫です。

SGTでは、素材をあらかじめ、一人分ずつカゴや容器に分けて準備しておきます。

ハイスコープでは、教材の順番を待つ葛藤や、共有をめぐるやりとりも大切な学びと考えていますが、SGTは15~20分と時間が短いので、葛藤を減らし、目的に集中できる環境を整え、子どもの探究を途切れさせない意図的な準備が大切です。

“関われた実感”が保育を変える

SGTの近い距離感だからこそ「子どもの探究を共に歩く3つのステップ」が効果的に機能します。大勢の中では届かなかった関わりが手ごたえを持ち始めると、「教えた」のではなく「子どもと一緒に発見した」のだと保育者は実感するようになります。

この実感が、日々の保育観そのものを静かに変えていきます。

まとめ

一人の“やってみたい”は、とても小さく始まります。安心できる少人数の場で、その火種が守られ、支えられ、広がっていくとき、学びは「させられるもの」から「動き出すもの」へと変わっていきます。

明日からでも子どものすぐ隣に座り、同じ素材に触れながら、その始まりの瞬間を共に見届けてみませんか?

写真提供:花園保育園

プロフィール:外崎了(とのさきさとる)

米国ハイスコープ教育研究財団 
認定トレーナー
https://highscope.org/

<活動実績>
HighScope Japan 講師
https://highscope-japan.org/

社会福祉法人 愛成会
http://www.sh-aiseien.jp/

幼保連携型認定こども園
花園保育園(青森県弘前市)
https://aiseikai1902.wixsite.com/hanazono

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