元園長と考える“ほごしゃしえん” 第12回:新年度、保護者との関係づくりで大切な「最初の一言」

4月。新しいクラスが始まり、子どもたちも保護者も、そして保育士も少し緊張する季節です。朝の送りの時間、保護者の表情はさまざまです。

「先生、よろしくお願いします」と明るく声をかけてくださる方もいれば、少し不安そうな表情で子どもを送り出す保護者もいます。

特に新入園児の保護者にとっては、「わが子を安心して預けられるだろうか」という気持ちが大きくなりやすい時期です。

実はこの新年度の関わりは、その後の保護者との関係づくりに大きく影響します。保護者は、保育士の何気ない言葉や関わりから、「この園は安心できるかどうか」を感じ取っているからです。

保護者が見ているのは「小さなやり取り」

保護者が園で安心できるかどうかを判断するとき、特別な出来事が必要なわけではありません。むしろ日々の小さなやり取りの中で、信頼関係は少しずつ築かれていきます。

例えば、お迎えの時間。

「今日も元気でした」「楽しく遊んでいました」

もちろん、それも大切な報告です。しかし保護者が本当に知りたいのは、“自分の子どもをちゃんと見てもらえているか”という安心感です。

例えば、こんな伝え方です。

「今日はブロックで長い電車を作って遊んでいました。お友達に『ここつなげていいよ』と声をかけていて、とても嬉しそうな表情でしたよ。」

このように、子どもの具体的な姿を伝えることで、保護者は「ちゃんと見てもらえているんだ」「園で安心して過ごしているんだ」と感じることができます。こうした小さなやり取りの積み重ねが、保護者との信頼関係を育てていきます。

保護者の“見えない不安”

保護者は、園での子どもの様子を直接見ることができません。そのため、さまざまな不安を抱えていることがあります。

・クラスに慣れているだろうか
・お友達とうまく過ごしているだろうか
・先生に迷惑をかけていないだろうか
・泣いていないだろうか

保護者が口にする言葉の奥には、こうした気持ちが隠れていることがあります。

例えば、「うちの子、ちゃんとできていますか?」という言葉の裏には、「先生に迷惑をかけていないでしょうか」という不安があることも少なくありません。

そのとき、「大丈夫ですよ」と答えるだけではなく、

「最初は少し緊張していましたが、好きなおもちゃを見つけて遊び始めましたよ」など、子どもの様子を具体的に伝えることで、保護者の安心につながることがあります。

保護者の言葉の奥にある気持ちに気づき、寄り添うことも、保護者支援の大切な一歩です。

保護者支援は「園全体」で考えること

保護者との関係づくりというと、保育士一人ひとりのコミュニケーション力が大切だと思われがちです。もちろん、日々の関わりはとても大切です。

しかし実際の現場では、こんな声を聞くこともあります。

・保護者対応に自信がない
・どこまで伝えていいか迷う
・職員によって対応が違う
・クレーム対応が不安

保護者支援は、個人の経験だけに頼るのではなく、園として考え、共有していくこと大切です。

例えば、
・子どもの姿をどう伝えるか
・保護者の不安にどう寄り添うか
・困ったときに職員同士で相談できる環境

こうしたことが園全体で共有されていると、保護者との関係づくりもより安心したものになります。

新年度だからこそ大切にしたいこと

新年度は、保護者との関係づくりが始まる大切な時期です。日々の小さな声かけや関わりの積み重ねが、「この園なら安心して預けられる」という信頼につながっていきます。子どもたちが安心して園生活を送るためにも、保護者との温かな関係が育っていくことを願っています。

※保護者との関係づくりや職員のコミュニケーションについて、保育現場の事例をもとにした園内研修も行っています。

・保護者との信頼関係づくり
・クレームにならない伝え方
・職員が安心して保護者対応できるコミュニケーション

など、園の状況に合わせてお伝えしています。

プロフィール:田村ますみ(たむらますみ)

保育園の育成トレーナー・研修講師として、保育士のスキルアップやチーム力向上を支援。園長経験を活かし、現場で役立つ実践的な研修を行う。自身の子育てや、不登校の子を支えた経験を通じ、保護者対応や子どもの心に寄り添う関わり方を伝えることが得意。一般社団法人「チェリッシュ」代表として、子育て支援にも尽力。

コーチングや心理学の専門資格を持ち、保育士が自信をもって子どもと向き合える環境づくりをサポートしている。

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