元園長と考える“ほごしゃしえん” 第7回:お迎えの3分が変わる!保護者がホッとする“声かけの黄金パターン”

こんにちは!

先日、ある保育士さんからこんな相談をいただきました。

「お迎えの時、保護者にどう声をかけたらいいかわからなくて…『今日も元気でした』ばかり言ってる自分が情けないです」

あー、わかります!私も新人の頃、同じこと悩んでました。

でも実は、お迎えの「たった3分」で保護者との信頼関係って、驚くほど変わるんです。 今日はその黄金パターンをお伝えしますね。

なぜ「今日も元気でした」では物足りないのか?

保護者の立場で考えてみましょう。

朝、泣いている我が子を預けて、仕事中もちょっと気になりながら1日を過ごす。そしてお迎えに来たとき──

「今日も元気でした」

確かに安心はするけど、「で、何してたの?」「お友達とは仲良くしてた?」「給食は食べた?」って、もうちょっと知りたいですよね。つまり、保護者が求めているのは「安否確認」じゃなくて「今日のストーリー」なんです。

保護者が本当に知りたい「3つのこと」

1. うちの子の“今日の姿”
「どんな遊びをしてたか」「どんな表情だったか」具体的な様子。

2. うちの子の“成長”
「昨日よりできるようになったこと」「がんばっていたこと」小さな変化。

3. うちの子は“大切にされている”という実感
「先生がちゃんと見てくれてる」「この子のことを気にかけてくれてる」という安心感。

この3つを3分で伝えられたら、保護者は「今日も安心して預けられた」と思って帰れるんです。

明日から使える!お迎え時の声かけ黄金パターン

基本の型はこの3ステップ

ステップ1:今日の具体的なエピソードから入る(30秒)
「おかえりなさい!今日、○○ちゃんがすっごく可愛いことしてたんですよ」

ステップ2:成長や変化を伝える(1分)
「実は今日、お友達に『一緒に遊ぼう』って自分から声をかけてたんです。先週までは恥ずかしがってたのに、すごい成長ですよね」

ステップ3:保護者の関わりを認める(30秒)
「きっとお家でお母さんが『お友達に声をかけてみようね』って教えてくださってるからですね。その関わりがちゃんと○○ちゃんに届いてますよ」

+α:明日への期待で締める(1分)
「明日も○○ちゃんとお友達の関わり、楽しみにしてますね。また明日教えますね!」

これだけで、保護者は「この先生、ちゃんとうちの子を見てくれてる」「また明日も安心して預けられる」って思えるんです。

NG例とOK例で学ぶ──印象が変わる伝え方

場面1:お友達とケンカした日

❌NG例 「今日、○○くんがお友達とケンカしちゃって…すみません」

→保護者の心の声:「え、うちの子が悪いの?どうしたらいいの?」

⭕OK例 「今日、○○くんがお友達とおもちゃの取り合いになっちゃったんですが、その後がすごかったんです。自分で『ごめんね』って言えて、『一緒に使おう』って提案してたんですよ。お友達も笑顔になって、そのあと仲良く遊んでました。ケンカから仲直りまでできるなんて、大きな成長ですよね」

→保護者の心の声:「うちの子、成長してる!先生がちゃんと見守ってくれてる」

場面2:給食を残した日

❌NG例 「今日、給食あまり食べなくて…お家でもちゃんと食べさせてくださいね」

→保護者の心の声:「うちでも食べないから困ってるのに…責められてる気分」

⭕OK例 「今日の給食、○○ちゃんはお野菜が苦手だったみたいで、ちょっと残しちゃったんですが、でもニンジンを一口だけ頑張って食べてたんです!『えらいね』って言ったら、すっごい笑顔で。少しずつでも挑戦できるって素晴らしいことですよね。お母さんも大変だと思いますが、焦らずいきましょうね」

→保護者の心の声:「先生が味方でいてくれる。一緒に頑張ろう」

時間がない時の“30秒バージョン”

「バタバタしてて、3分も話せない!」って日もありますよね。

そんな時は、この30秒パターンを。

「今日の○○ちゃんベストシーン!」形式

「お疲れ様です!今日の○○ちゃん、お片付けの時に率先して動いてくれて、他のお友達も真似してたんです。○○ちゃん、みんなのお手本になってますよ!」

具体的なエピソード一つだけでも、「元気でした」よりずっと伝わります。

「でも、毎日そんなエピソード見つけられない…」と思ったあなたへ

大丈夫です。エピソードは「大きな出来事」じゃなくていいんです。

  • 朝、泣かずに「いってきます」が言えた
  • 給食の時、お箸の持ち方がちょっと上手になってた
  • お昼寝の時、自分で布団に入れた
  • 絵本の時間に、じっと集中して聞いてた
  • お友達の名前を呼んでた
  • お片付けの時に、自分のカバンを持ってこれた

こんな小さなことでいいんです。 むしろ、こういう「日常の小さな成長」こそ、保護者は知りたがってるんです。

連絡帳との使い分け

「連絡帳にも書いてるから、同じこと話すのもな…」って思いますよね。
でも、声で伝えるからこそ伝わるものがあるんです。
連絡帳は「記録」、お迎えは「共感」と思うといいかもしれません。

3分の積み重ねが、1年後の信頼関係を作る

毎日たった3分。

でも、その3分を200日続けたら、600分。10時間分の対話です。
その積み重ねが、保護者との深い信頼関係を作っていくんです。

「この先生に預けてよかった」 「この先生だから相談できる」
「来年もこの先生がいい」

そんな言葉をもらえる日が、きっと来ます。


「もっと具体的に学びたい」「園全体で取り組みたい」と思ったら

私の研修では、このような「明日から使える声かけパターン」を、さらに深く・具体的にお伝えしています。

□ お迎え時の声かけに自信がない先生が多い □ 若手に具体的にどう教えたらいいかわからない □ 園全体として保護者対応を底上げしたい □ 保護者からの信頼をもっと得たい

一つでも当てはまったら、ぜひお気軽にご相談ください。

「うちの園でもやってもらえる?」というご質問だけでも大歓迎!

プロフィール:田村ますみ(たむらますみ)

保育園の育成トレーナー・研修講師として、保育士のスキルアップやチーム力向上を支援。園長経験を活かし、現場で役立つ実践的な研修を行う。自身の子育てや、不登校の子を支えた経験を通じ、保護者対応や子どもの心に寄り添う関わり方を伝えることが得意。一般社団法人「チェリッシュ」代表として、子育て支援にも尽力。

コーチングや心理学の専門資格を持ち、保育士が自信をもって子どもと向き合える環境づくりをサポートしている。

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