ハイスコープで明日からはじめる質の高い保育【第9回】一人の経験が「みんなの学び」になるとき ~ラージグループタイム~

不適切保育の事例が次々と明るみになっている昨今。保育の質を上げて、子どもたちの成長に貢献するためには何ができるでしょうか? このコラムでは、OECD世界5大幼児カリキュラムの1つに選ばれた「ハイスコープ」から、みなさんの保育に役立つアイデアを紹介します。

なぜ「大人数の活動」が子どもの育ちにつながるのか?

「ぼくもやりたい!」「それ、もう一回!」「みんなでやろう!」

みんなで集まる時間には、子どもたちの声や動きが一気に重なり合う瞬間があります。

一人が立ち上がると、隣の子がまねをする。
誰かのひとことに、別の子が笑いだす。

保育者の投げかけから始まった活動が、子どもたちの反応によって少しずつ形を変えていく。

大人数の活動というと「みんなを落ち着かせる」「同じことをそろえて行う」といったイメージを持たれることもあるかもしれません。もちろん、集団で過ごすためには、一定のまとまりや見通しは欠かせません。けれども、大人数の活動は、子どもたちを一つの形にそろえるためだけの時間ではありません。

子どもたちと大人が一堂に集まり、同じ空間と体験を共有しながら「みんなでいるって楽しい」という感覚を育てていく時間でもあります。その積み重ねが、やがて「私たち」という共同体の感覚につながっていきます。

一人ひとりの参加が重なり合い、「みんなの楽しさ」に広がる時間。

どのようにして「大人数の活動」をデザインするのか?

大人数の活動では、子どもたちが安心してその場に入り、自分なりに参加し、友だちや保育者と一緒に活動をつくっていけるようにすることが大切です。

そのために保育者は、活動の中に少しの余白を残します。

  • 見ているだけの子が、少しずつ気持ちを向けられる余白。
  • 友だちの動きをまねしてみる余白。
  • 一人のひとことや動きが、みんなの活動へ広がっていく余白。

その余白の設計こそが、大人数の活動を成功させる鍵となります。

ハイスコープが考える「大人数の活動」

ハイスコープでは、この大人数で共通の体験を楽しむ時間を「ラージグループタイム(以下LGT)」と呼びます。その特徴の一つは、活動を「始まり・中間・終わり」の流れで捉えることです。

【始まり】


始まりの目的は、子どもたちを活動に引き込むことです。歌や手遊び、簡単な動きのダンスなどから始めることで、「やってみようかな」という気持ちが生まれます。

ここで大切なのは、最初から全員をきれいにそろえることではありません。子どもたちが無理なくその場に入り、活動へ気持ちを向けられるようにすることです。

簡単な動きから、自然と活動に引き込まれていく瞬間。

【中間】


中間は、活動の中心となる時間です。

歌、ストーリー、協同的なゲーム、身体表現などを通して、子どもたちは友だちや大人と一緒に活動を深めていきます。この時間の中心にあるのは、「同じことをすること」そのものではありません。それぞれの子が自分なりに参加し、その参加が活動を豊かにしていくことです。

  • 一人の動きに友だちの視線や反応が集まる。
  • 誰かのアイデアが活動を広げる。
  • みんなで笑い合いながら同じ時間を共有する。

そうした経験の中で、子どもたちの「みんなでいるって楽しい」という感覚が育まれていきます。

一人の表現(スピン)が、場の雰囲気を動かしていきます。

【終わり】


終わりの目的は、次の時間へ落ち着いて移ることです。

楽しい活動の余韻を大切にしながら、気持ちを整え、次の活動へつないでいきます。大人数の活動は、盛り上がって終わればよいというものではありません。

安心して始まり、十分に味わい、落ち着いて終わる。

その流れがあることで、子どもたちは見通しを持って参加しやすくなります。

余韻を味わいながら、次の時間へ。

このように、ハイスコープのLGTは、子どもたちが入りやすく、主体的に参加し、次の活動へ安心して移っていくためにデザインされた時間なのです。

“参加が見える”と保育が変わる

大きな声で発言する子、友だちの動きをまねする子、少し離れて見ている子、表情で反応している子。そのどれもが、その子なりの「参加」です。保育者がこうした小さな参加に気づき、必要に応じてみんなの場へ返していくことで、一人の姿が集団の活動を動かすきっかけになります。

そうした時間を子どもたちと共に重ねる中で、保育者自身にも「私もこの場をつくるチームの一員なのだ」という実感が深まっていきます。

保育者も子どもも、一緒に楽しむことで場が育っていく。

まとめ

「今日はみんなで何をするか」だけでなく、「今日は、誰のどんな姿が、みんなの活動を動かしていくのだろう」という視点で見てみると、いつもの集まりの時間が少し違って見えてくるかもしれません。

  • 子どもの小さな反応を拾ってみる。
  • 一人のアイデアを、みんなの活動につなげてみる。
  • 見ているだけの子の“参加の芽”にも目を向けてみる。

明日からのその小さな関わりの積み重ねが、子どもたちに「みんなでいるって楽しい」という実感を育てていきます。

写真提供:花園保育園

プロフィール:外崎了(とのさきさとる)

米国ハイスコープ教育研究財団 
認定トレーナー
https://highscope.org/

<活動実績>
HighScope Japan 講師
https://highscope-japan.org/

社会福祉法人 愛成会
http://www.sh-aiseien.jp/

幼保連携型認定こども園
花園保育園(青森県弘前市)
https://aiseikai1902.wixsite.com/hanazono

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