
SDGsとは、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標で、2030年までの達成を目指す17の目標で構成されています。保育園でも、食育や自然遊び、絵本などを通じて、子どもがSDGsに親しむ取り組みが広がっています。
本記事では、保育園でSDGsに取り組む意義や、取り組みやすい目標、目標別・年齢別の具体的な実践例、子どもへの伝え方、園自体の取り組みや発信、よくある質問までを解説します。
目次
SDGsとは?保育園で取り組む意義
まずは、SDGsの基本と、保育園で取り組む意義を整理します。「10の姿」やESDとのつながりを知ると、日々の保育とSDGsが地続きであることが見えてきます。
SDGsの基本(2015年採択・17目標・169ターゲット・2030年)
SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、2015年9月に国連サミットで採択されました。
2030年までに、世界が抱える貧困や環境、教育などの課題を解決することを目指す国際的な目標です。「誰一人取り残さない」を理念に、17の目標と、それを具体化した169のターゲットで構成されています。
貧困や飢餓の解消から、環境の保護、ジェンダー平等まで内容は幅広く、国や企業だけでなく、園や家庭など身近な場でも取り組めるものが数多く含まれています。まずは全体像を知ることが出発点です。
保育でSDGsに取り組む意義と「10の姿」・ESDとの関係
保育園でSDGsに取り組む意義は、子どもが小さいうちから、身の回りの環境や人との関わりに関心を持つきっかけになる点にあります。
保育所保育指針が示す「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」とも重なる部分が多く、持続可能な社会の担い手を育てるESD(持続可能な開発のための教育)の考え方ともつながります。SDGsは、これからの保育と親和性の高いテーマだといえます。
「取り入れる」のではなくSDGsの視点で保育を深める
大切なのは、SDGsを特別な活動として「取り入れる」と身構えるのではなく、SDGsの視点で日々の保育を見直し、深めることです。食育や自然遊び、物を大切にする関わりなど、園がすでに行っている多くの活動は、SDGsとつながっています。
それらに意味づけをして、ねらいを意識するだけでも、保育はより豊かになります。ゼロから始めるのではなく、今ある保育を活かす視点が役立ちます。
保育園で取り組みやすいSDGsの目標

17ある目標のすべてに一度に取り組む必要はありません。まずは、保育になじみやすい目標から始めましょう。以下の表で、保育に関わりの深い目標と実践例を整理します。
【整理表】保育に取り入れやすいSDGsの目標と実践例
| 目標 | テーマ | 保育での実践例 |
| 2 | 飢餓をゼロに | 食育、食べ物への感謝、給食量の調整 |
| 3 | すべての人に健康と福祉を | 手洗い・生活習慣、体を動かす遊び |
| 5 | ジェンダー平等を実現しよう | 性別で役割や色を決めつけない関わり |
| 6・7 | 安全な水・エネルギー | 節水・節電、資源を大切に使う |
| 12 | つくる責任つかう責任 | リサイクル製作、物を大切にする |
| 13・14・15 | 気候・海・陸の環境 | 自然遊び、栽培、ごみ拾い、生き物観察 |
| 17 | パートナーシップ | 家庭・地域との連携 |
目標2・12(食育・食品ロス)
保育で最も取り組みやすいのが、食に関わる目標2「飢餓をゼロに」と目標12「つくる責任つかう責任」です。給食やおやつを通じて、食べ物への感謝や、世界には十分に食べられない人がいることを伝えられます。
食べ残しを減らす声かけや、給食量の調整による食品ロスの削減も、目標12につながる身近な取り組みです。日々の食事の場面が、そのままSDGsの学びになります。
目標3・5(健康・ジェンダー平等・多様性)
健康や多様性に関わる目標も取り入れやすいテーマです。目標3「すべての人に健康と福祉を」は、手洗いや生活習慣、体を動かす遊びを通じて自然に学べます。
目標5「ジェンダー平等」は、色や遊び、役割を性別で決めつけず、一人ひとりの個性を尊重する日々の関わりが実践になります。特別な活動でなくても、保育の姿勢そのものがSDGsにつながります。
目標6・7(節水・節電)
目標6「安全な水とトイレを世界中に」と目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」は、節水や節電といった毎日の生活習慣から取り組めます。
手洗いや歯みがきのときに水を出しっぱなしにしない、使っていない部屋の電気を消すなど、子どもが自分でできる行動がたくさんあります。
「お水は大切に使おうね」「電気を消してくれてありがとう」といった声かけを重ねることで、水やエネルギーが限りある資源であることに気づくきっかけになります。
当番活動に「電気を消す係」を加えるなど、遊び感覚で習慣にしていくのもよいでしょう。
目標13・14・15(環境・自然・ごみ)
自然や環境に関わる目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」も、保育になじみます。
散歩や園庭での自然観察、栽培活動、生き物の世話を通じて、自然の大切さを体感できます。植物が二酸化炭素を吸収して育つことや、電気を大切に使うことが地球温暖化を防ぐことにつながることも、年齢に応じて伝えられます。
ごみの分別や散歩中のごみ拾い、落ち葉や木の実を使った遊びも、環境を守る意識を育てるきっかけの一つです。
道に落ちたごみは川を通って海に流れ込むこともあるため、ごみ拾いは海の生き物を守ることにもつながります。身近な自然との関わりが、環境への関心を育てます。
目標別・年齢別の具体的な実践例

ここでは、園で取り組みやすい具体的な実践例を紹介します。食育や製作、絵本など、日々の保育に取り入れやすいものを、ねらいとあわせて見ていきましょう。
食育・栽培・クッキングの実践
食育・栽培・クッキングは、SDGsの実践として最も取り組みやすい活動の一つです。野菜を育てて収穫し、調理して食べる一連の体験は、食べ物がどこから来るのかを実感する学びになります。
土に触れ、水をやり、成長を見守る過程で、命や自然への関心も育ちます。収穫した野菜を給食に使えば、食への感謝や食品ロスへの意識にもつながります。
「世界には十分に食べられない人もいる」ことを、年齢に応じてやさしく伝えるのもよいでしょう。種まきや水やり、皮むきなど無理のない役割を任せると、達成感も得られます。身近な食を入り口に、子どもが主体的に関われるのが大きな魅力です。
リサイクル・製作・ペーパーレスの実践
リサイクルや製作、ペーパーレスの取り組みも、SDGsを体感できる活動です。牛乳パックや空き箱、新聞紙などを製作の材料に使えば、物を大切にし、繰り返し活かす意識が育ちます。
使い終わったものを別のものに作り変える楽しさは、資源を大切にする心につながります。ごみの分別を遊びの中で経験することも、環境への関心を高めます。
園全体では、おたよりや連絡帳をデジタル化して紙の使用を減らすなど、運営面でのペーパーレス化も実践の一つです。子どもの活動と園の運営の両面から、資源を大切にする姿勢を示せます。身近な素材を活かす工夫が、創造性も育みます。
絵本・紙芝居・遊びで伝える実践
絵本・紙芝居・遊びは、子どもにSDGsを伝える有効な方法です。SDGsをテーマにした絵本の読み聞かせは、貧困や環境といった難しいテーマを、物語を通じて自分ごととして感じるきっかけになります。
ごっこ遊びやゲームに取り入れれば、楽しみながら自然に理解が深まります。年齢に合わせて伝え方を変えることも大切です。乳児には身近な自然や生き物に触れる体験を、幼児には世界の問題を少しずつ言葉で伝えるなど、発達に応じた工夫をします。
遊びの中にSDGsを溶け込ませることで、子どもは「教えられる」のではなく、自ら気づき、無理なく関心を広げていきます。
子どもへのわかりやすい伝え方と注意点

SDGsを子どもに伝えるときは、言葉選びと配慮が大切です。難しく教え込むのではなく、体験を通じて自然に関心を持てるようにする工夫を整理します。
難しい言葉を避け体験と結びつける伝え方
子どもにSDGsを伝えるときは、難しい言葉をそのまま使わず、体験と結びつけることが大切です。「持続可能な開発目標」と説明しても、子どもには伝わりません。
「ごはんを残すともったいないね」「水を出しっぱなしにしないようにしよう」といった、生活に根ざした具体的な言葉に置き換えて伝えます。
実際に見たり触れたり、体を動かしたりする体験とセットにすることで、理解が深まります。年齢や発達に応じて、伝える内容や言葉を選ぶことも欠かせません。まずは身近なことから、子どもが「自分にもできる」と感じられるように伝えましょう。
マークの使用ルール・押し付けない配慮
SDGsのロゴやマーク、アイコンには使用のルールがあります。掲示物や配布物に使う際は、国連が定めるガイドラインを確認し、正しく使うようにしましょう。
マークを園内に貼って視覚的に意識づけるのは有効ですが、使い方には注意が必要です。また、SDGsの取り組みは、子どもや保護者に価値観を押し付けるものにならないよう配慮します。
「やらなければいけない」と義務的に進めるのではなく、子どもが自ら興味を持ち、楽しみながら関われるようにすることが大切です。園の実情に合わせて、無理のない範囲で取り組みましょう。
園自体の取り組みと保護者・地域への発信

SDGsは、子どもへの活動だけでなく、園の運営や情報発信でも実践できます。園自体の取り組みと、保護者・地域を巻き込む工夫を見ていきましょう。
ペーパーレス(ICT)・省エネなど園運営でのSDGs
SDGsは、子どもへの活動だけでなく、園自体の運営でも実践できます。おたよりや連絡帳、各種の記録をICT化してペーパーレスを進めれば、紙やインクの使用を減らし、資源の節約につながります。これは目標12や環境関連の目標に沿った取り組みです。
あわせて、こまめな消灯や冷暖房の適切な使用による省エネ、地元の食材を使うなど給食の工夫も、園でできるSDGsです。職員が日々の運営の中で意識することで、子どもたちへの環境教育にも説得力が生まれます。
「大人が実践している」姿は、何より子どもへのメッセージになります。園の姿勢そのものが、保護者や地域からの信頼にもつながっていきます。
活動を保護者・地域に発信し連携する
SDGsの取り組みは、保護者や地域に発信し、連携することでさらに広がります。園での活動のねらいや子どもの様子を、おたよりや写真で保護者に伝えれば、家庭でも同じ視点で関わるきっかけになります。
株式会社ウェルキッズが提供する「ウェルキッズフォト(WEL-KIDS PHOTO)」のような写真共有の仕組みを使えば、活動の様子を手間なく保護者に届けられます。また、地域の農家や企業、団体と連携して、栽培や清掃、リサイクルなどに取り組む例もあります。
園だけでは実現しにくい体験も、地域と協力することで可能になります。園だけで完結させず、家庭や地域を巻き込むことで、目標17のパートナーシップにもつながり、取り組みが無理なく定着していきます。
よくある質問
最後に、保育園のSDGsの取り組みでよく寄せられる質問に答えます。
Q. SDGsの取り組みは採用活動や保護者からの評価にどう影響しますか?
SDGsへの取り組みは、園の理念や社会に対する姿勢を示すものとして、保護者からの信頼や共感につながります。求職者にとっても、社会性を大切にする園として魅力に映り、採用面でプラスに働くことがあります。
ただし、形だけの取り組みでは伝わりません。日々の保育に根ざした活動であることが伝わるよう、ねらいや子どもの様子を丁寧に発信することが大切です。
Q. SDGsの取り組みに消極的な職員に、どう協力を促せばいいですか?
消極的な職員には、いきなり「SDGs」と構えさせないことがポイントです。普段の食育や自然遊び、物を大切にする関わりが、すでにSDGsにつながっていることを示すと、抵抗感が和らぎます。
新しい業務を増やすのではなく、今ある保育に意味づけをする形から始めましょう。目的を園全体で共有し、小さな取り組みから無理なく広げていくことが、協力を得るコツです。
Q. 保育士向けのSDGs研修・教材はどこで手に入りますか?
保育士向けのSDGs研修や教材は、さまざまな形で入手できます。自治体や保育団体が実施する研修、SDGsをテーマにした絵本や教材、オンライン講座などが活用できます。
マークやアイコンについては、国連広報センターや外務省がガイドラインとあわせて公開しています。使用の際はルールを確認しましょう。まずは身近な絵本や公的機関の資料から取り入れると始めやすいでしょう。
Q. SDGsの取り組みを第三者評価や補助金申請に活用できますか?
取り組みを記録・発信しておくと、第三者評価の際に園の特色としてアピールできる材料になります。また、環境や地域に関する助成・補助の申請で活用できる場合もあります。
ただし、補助金や助成は制度ごとに対象や要件が異なるため、活用できるかどうかは、実施している自治体や団体に確認することが必要です。日頃から活動を記録に残しておくと、いざというときに役立ちます。
Q. 地域の企業や団体のSDGs活動と連携することはできますか?
地域の企業や団体との連携は、SDGsの目標17「パートナーシップ」そのものです。地域の農家と栽培体験をする、商店や企業と一緒にリサイクルや清掃活動を行う、団体の出前授業を受けるなど、さまざまな形が考えられます。
園だけでは難しい体験も、地域と協力することで実現できます。無理のない範囲で、身近な地域資源を活かしながら、継続できる連携を築いていくとよいでしょう。
まとめ
保育園のSDGsは、子どもが身近な体験を通じて持続可能な社会への関心を育む取り組みです。食育や環境、多様性など取り組みやすい目標から始め、絵本や遊びで年齢に合わせてわかりやすく伝えることが大切です。
マークの使用ルールを守り、価値観を押し付けない配慮も欠かせません。ペーパーレスなど園自体の取り組みや、活動の保護者・地域への発信もあわせて進めれば、SDGsは園の保育を深め、園の魅力を高める取り組みになります。
