元園長と考える“ほごしゃしえん” 第18回:子どもが一歩成長すると、保護者支援も変わる~年齢に合わせて考える「保護者への伝え方」~

こんにちは、田村ますみです。

10月になると、子どもたちの姿が少し変わってきませんか?4月には先生のそばにいた子が、お友達と遊ぶようになったり、「自分で!」と気持ちを出せるようになったり。幼児クラスでは、お友達と相談しながら遊ぶ姿も増えてきます。

子どもたちが一歩成長した証。でも、成長すると、今までなかった「困ったこと」も出てきます。特に幼児クラスでは、「○○ちゃんに嫌なことを言われた」「一緒に遊んでくれなかった」など、お友達とのトラブルも増えてきます。

そんな子どもの話を聞いた保護者から、「園で何かあったんでしょうか?」「うちの子、大丈夫ですか?」と相談されることもあるかと思います。

こんな時、私はいつも思います。保護者支援は、年齢によって少しずつ変わる。子どもの姿が変われば、保護者が気になることも変わるからです。

0歳児は「安心して過ごせているか」

0歳児の保護者が気になるのは、「ちゃんと眠れていますか?」「ミルクは飲めていますか?」「泣いていませんか?」といった、園での生活そのものです。

だから、「今日は元気でしたよ。」だけではなく、「午前寝は30分できました。起きた後は少し泣きましたが、抱っこすると落ち着いて、先生の顔を見て笑ってくれましたよ。」と、具体的な姿を伝える。

保護者が知りたいのは、「何も問題がなかったか」だけではありません。「この子は、園で安心して過ごせているのかな?」 ということなのです。

1・2歳児は「園ではできるのに、家ではやらない」

1・2歳児の保護者から、よく聞く相談があります。

「園では自分で食べているのに、家では『食べさせて』って言うんです。」「園ではお片付けできるんですよね?家では全然やらなくて……。」

先生方も、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。そんな時、「園ではちゃんとできていますよ。」と答えて終わってしまうことがあります。

でも、保護者が本当に心配しているのは、「どうして家ではできないんだろう。」「私の関わり方が悪いのかな。」ということかもしれません。

園では、生活の流れが決まっていたり、先生の声かけがあったり、お友達の姿を見たりします。一方、家庭では、大好きなお母さんやお父さんに甘えられる。だから、「園ではできるのに、家では『やって』と言う」ことがあっても、不思議ではありません。

そんな時、「園ではできるのに、どうしてでしょうね?」ではなく、「園では頑張っているんですね。お家では甘えたい気持ちが出ているのかもしれませんね。」と伝えてみる。すると、「できない」ではなく、「安心できる場所だから甘えているのかもしれない」 と、子どもの見方が変わることがあります。

3・4・5歳児は「友達とのトラブル」も成長の一部

幼児になると、友達との関係がどんどん深くなります。その分、「一緒に遊びたい」「自分が先に使いたい」「私はこうしたい」と、それぞれの思いがぶつかります。

例えば、「今日、○○ちゃんとけんかしました。」と伝えるだけでは、保護者は「何があったの?」と心配になります。

でも、「二人とも同じおもちゃを使いたくて、言い合いになったんです。でも、先生と一緒に話をすると、順番に使うことを決めることができました。」と伝えたらどうでしょう。

「けんかをした」という出来事の中に、「自分の気持ちを伝えること」「相手の気持ちを知ること」「折り合いをつけること」を学んでいる姿が見えてきます。

5歳児なら、さらに、「どうしたら一緒に遊べるかな?」と、自分たちで考える経験も大切になります。保護者にも、「トラブルがありました」だけではなく、「トラブルの中で、こんなことを考えていましたよ。」と伝える。

すると、同じ出来事でも見え方が変わります。

保育者は「子どもの姿を翻訳する人」

私は、保育者には、子どもの姿を保護者に翻訳する役割があると思っています。子どもは、「イヤ!」「取った!」「もう遊ばない!」と表現する。保護者は、「どうしてそんなことをするの?」と心配する。その間に保育者が入って、「この年齢では、今こんな力が育っている途中なんですよ。」と伝える。それだけで、「困った行動」が「成長の途中にある姿」に変わることがあります。

だから保護者支援は、難しい言葉を覚えることではありません。子どもをよく見る。その姿の意味を考える。そして、保護者と一緒に成長を見る。それだけでも、保護者との関係は変わっていきます。

研修で先生方とお話ししていると、「ますみさんの研修を受けて、保護者の見方が変わりました。」と言っていただくことがあります。私は、この「見方が変わる」ということを、とても大切にしています。

そして、子どもを「できる・できない」だけで見るのではなく、「今、この子にはどんな力が育っているんだろう?」と見る。10月。子どもたちが一歩成長するこの時期だからこそ、いつもの保護者との会話を少しだけ変えてみませんか?

子どもの姿を一番近くで見ている保育者だからこそ、保護者に届けられる言葉があります。私は、そんな言葉を一緒に見つけられる保育者を、これからも増やしていきたいと思っています。

プロフィール:田村ますみ(たむらますみ)

保育園の育成トレーナー・研修講師として、保育士のスキルアップやチーム力向上を支援。園長経験を活かし、現場で役立つ実践的な研修を行う。自身の子育てや、不登校の子を支えた経験を通じ、保護者対応や子どもの心に寄り添う関わり方を伝えることが得意。一般社団法人「チェリッシュ」代表として、子育て支援にも尽力。

コーチングや心理学の専門資格を持ち、保育士が自信をもって子どもと向き合える環境づくりをサポートしている。

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