
子どもたちの健やかな成長と幸せのために意識したいのが、国が掲げる「はじめの100か月の育ちビジョン」です。
これは、こども家庭庁が中心となって取りまとめたもので、子どものウェルビーイング(心身ともに健康で、社会的にも良好な状態であること)」を高めるための重要な指針となります。
本記事では、「はじめの100か月の育ちビジョン」が示す5つの柱を紹介します。国の具体的な取り組みや、保育者が意識したいポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
参考:はじめの100か月の育ちビジョン 専門職の方に向けた研修ガイドブック
目次
はじめの100か月の育ちビジョンとは?

「はじめの100か月の育ちビジョン」とは、赤ちゃんがお腹の中にいるときから、小学校に入学するまでの約100か月間を、生涯にわたる幸せ(ウェルビーイング)の土台を作る大切な時期と捉えた指針です。
この時期の子どもを「権利を持つ一人の人間」として尊重し、家庭や保育園、地域が協力し、健やかな成長を支えることを目的としています。すべての子どもが愛情深く守られ、安心して生活できるようにするための、社会共通のビジョンです。
はじめの100か月の育ちビジョンはなぜ重要?

子どもたちにとっての「はじめの100か月」は、心と身体が大きく成長する大切な期間です。また、子どもが小学校に上がるころまでは、保護者はもちろん、保育園や幼稚園、小学校や行政、地域などでさまざまな人と関わります。
入園・入学などのライフイベントも多く、「保育園から小学校」「家庭と行政」といったように、子どもの成長の過程で”切れ目”が生じやすい期間でもあります。
「はじめの100か月の育ちビジョン」は、そんな”切れ目”をなくし、社会全体で子どもの成長を支えるための共通の考え方を広めるものです。
はじめの100か月で大切にしたい5つのビジョン

「はじめの100か月の育ちビジョン」は、以下の5つのビジョンで構成されます。
- こどもの権利と尊厳を守る
- 「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイングを高める
- 「こどもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える
- 保護者・養育者のウェルビーイングと成長の支援・応援をする
- こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す
こどもの権利と尊厳を守る
子どもは大人と同様、一人の人間として尊重されるべき存在です。子どもが自分の気持ちを安心して伝えられ、その意見が大切にされるような環境を整える必要があります。
大人の都合を押し付けるのではなく、子どもの今の幸せを優先することが大切です。
「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイングを高める
「ここは安全だ」という確かな安心感があるからこそ、子どもは新しいことに挑戦できます。失敗しても温かく受け止めてもらえる経験を繰り返すことで、自信や意欲が育ちます。
この「安心」と「挑戦」のサイクルを回し続けることが、子どものウェルビーイングにつながります。
「こどもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える
支援が必要なのは、子どもが生まれてからだけではありません。お腹の中にいるときから、妊娠中の不安や期待に寄り添い、出産、乳幼児期、そして小学校へと、途切れることなくサポートを届ける必要があります。
制度や場所が変わっても、子どもの成長の記録や家族の思いをしっかりと引き継ぎ、ずっと見守り続ける体制が求められます。
保護者・養育者のウェルビーイングと成長の支援・応援をする
子育てをする大人が笑顔でいられることは、子どもの幸せに直結します。保護者が一人で悩みを抱え込まないよう、周りがサポートすることが重要です。
また、親自身も子育てを通じて成長し、自分らしく生きていけるような支援も必要です。
こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す
子育ては家庭だけで行うものではなく、保育施設や小学校も含め、地域全体、社会全体で支えるものです。
近所の人との挨拶や公園の整備、企業の理解など、子どもの成長を社会全体で見守ることが重要となります。多様な人々が関わることで、子どもがどこにいても温かく守られていると感じられるような、豊かな社会の実現が求められます。
はじめの100か月の育ちビジョン推進に向けた国の取り組み例

「はじめの100か月の育ちビジョン」を推進するため、国は以下のような取り組みを行っています。
- ビジョンの普及推進
- 児童虐待防止等の推進
- こども誰でも通園制度の推進
- 保育士・保育教諭・幼稚園教諭等の人材育成・確保・処遇改善等
- 幼保小の架け橋プログラムの推進
- 乳幼児触れ合い体験の推進
ビジョンの普及推進
「はじめの100か月の育ちビジョン」を「言葉」だけで終わらせないよう、普及啓発に取り組んでいます。イベントの開催やメディアとのタイアップなどを通じて、社会全体で「子どもの幸せ」を第一に考える文化を作るための啓発活動を行っています。
児童虐待防止等の推進
困難を抱える家庭を早期に見つけ、サポートを届ける体制を強化しています。こども家庭センターの体制整備や、児童相談所の体制強化などを通じて、孤立する親子を作らないよう見守りの目を増やし、すべての子どもの安全と権利を守る取り組みを進めています。
こども誰でも通園制度の推進
「こども誰でも通園制度」とは、親の就労状況に関わらず、時間単位で柔軟に保育園などを利用できる仕組みです。すべての子どもに集団生活の機会を提供するとともに、保護者の育児負担を軽減し、家庭のウェルビーイングを高めることを目指しています。
保育士・保育教諭・幼稚園教諭等の人材育成・確保・処遇改善等
子どもの健やかな成長には、保育のプロフェッショナルの力が欠かせません。給与の引き上げやキャリアアップの支援、働く環境の改善を推進しています。保育人材が自らの仕事に誇りを持ち、心にゆとりを持って子どもと向き合えるよう、国を挙げて施策を進めています。
幼保小の架け橋プログラムの推進
幼稚園や保育園から小学校へ、学びと育ちをスムーズにつなげる取り組みです。各自治体の幼児教育と小学校教育の関係者が連携し、5歳から小学校1年生までの「架け橋期のカリキュラム」の開発や実施などに取り組むプログラムを推進しています。
乳幼児触れ合い体験の推進
若い世代が、赤ちゃんや幼児と触れ合う機会を作っています。命の大切さを肌で感じ、将来の出産・育児を前向きに捉えるきっかけを作ることを目的としています。
はじめの100か月の育ちビジョンのために保育者が意識したいポイント
「はじめの100か月の育ちビジョン」のために、保育者が意識したいポイントをまとめました。
園児一人ひとりに丁寧に接する
子どもを一人の人間として尊重し、丁寧に接することが大切です。相手が乳幼児であっても大人と同様に権利を持つ存在として捉え、その子のつぶやきや願いに耳を傾けます。
「一人の人間として大切にされている」という実感は、子どもの自己肯定感を高め、自分や他者を大切にする心の土台となります。
安心感を育む
乳幼児期には、身近な大人が気持ちに寄り添い、受け止めてくれる経験の繰り返しにより、愛着を形成することが重要です。
保育者が確かな「安心の拠点」となることで、子どもは心の安定を得やすくなります。この安心感があるからこそ、子どもは周囲の人を信頼し、自分から新しい世界へ一歩踏み出す勇気を持つことができるのです。
園児の意欲や関心を大切にする
子どもの「やってみたい」という好奇心や興味を、豊かな「遊びと体験」につなげましょう。大人が活動を強制するのではなく、子どもが主体的に選べる環境を整え、その挑戦を温かく見守り応援することが大切です。
自分の関心から始まった遊びに没頭する経験は、学びに向かう力や、ウェルビーイングを高める基礎となります。
地域と積極的につながる
子どもと地域をつなげ、社会全体で子育てを支える「厚み」を作ることが重要です。
地域の高齢者や学生との交流、商店街との関わりなどを通じて、子どもが多様な人と触れ合う機会を増やしましょう。また、地元の小学校との関わりをつくると、小学校入学の際にも不安感が軽減されたり、新しい環境に早く馴染めたりする可能性があります。
まとめ
「はじめの100か月の育ちビジョン」は、お母さんのお腹にいるときから小学校入学までを、子どもの成長において極めて重要な時期と捉え、社会全体でその育ちを支えるための指針です。
家庭や保育施設、地域が一丸となって子どもを見守り、ウェルビーイングを高めることが重要です。
保育者は「はじめ100か月」において、家庭の次に子どもと接する機会が多く、重要な役割を担います。5つのビジョンを理解し、実践することで、子どもたちの未来がよりよいものになるようサポートしましょう。
