主体性を育む保育とは?保育園での実践方法やメリットを解説

保育において、子どもたちの主体性を育むことはとても重要です。しかし、主体性の大切さは理解しつつも、日々の慌ただしい保育の中では、ついつい「指示」や「一斉行動」が中心になってしまうことも多いでしょう。

また、実際の現場でどのように取り入れればよいのか、悩んでいる方も多いはずです。

本記事では、「主体性」そのものの基本から、主体性を育むメリットや実践方法などを解説します。保育の現場ですぐに取り入れられるヒントを、一緒に探していきましょう。

「主体性」は保育所保育指針でも重要項目

保育所保育指針とは、厚生労働省が策定した「保育のマニュアル」のようなものです。保育所運営の基本的な考え方や保育のねらいと内容、保育所運営のルールなどが記されており、日本の保育の質を一定に保つための「ものさし」のような役割を持っています。

そんな保育所保育指針のなかには、子どもの主体性に関する記述が複数盛り込まれています。

つまり、子どもの主体性を育む保育は、国の保育方針における重要なポイントになっているといえるでしょう。

参考:保育所保育指針|厚生労働省

そもそも主体性とは?

「主体性」とは、簡単にいうと「自分の意思で判断し、行動すること」です。

周りから言われた通りに動くのではなく、「これがやりたい」「こうすれば良さそう」と、自分から目的を持って動く姿勢を指します。

保育の現場では、子どもが自分の興味に沿って遊びを選んだり、友達と相談してルールを決めたりする姿がこれにあたるでしょう。

主体性を育む保育とは?

子どもの主体性を育む保育とは、大人が「やらせる」のではなく、子どもが「やりたい」と思う気持ちを支える保育のことです。

保育士が活動内容をすべて管理したり、すぐに先回りして手助けしたりせず、子どもが自分で考え、試行錯誤する時間を十分に確保します。

また、子どもの気持ちに寄り添い、発見や驚きを共有し、自分で決めて動けたことを認めてあげることが大切です。

子どもたちが自ら考え、行動できる環境を整えることが、主体性の養成につながります。

子どもの主体性を育むメリット

子どもの主体性を育むメリットは、主に以下の3つです。

  • やる気と自信がつく
  • 考える力が身につく
  • 責任感が育つ

自分で決めて行動し、「できた!」という達成感を味わえると、「自分ならできる」という自己肯定感が育まれます。これにより、なんでもチャレンジする意欲や、自信を身につけることが可能です。

また、自分で考えて何かを選ぶことは、「どうすればうまくいくか」を考える練習になります。そのため、子どもの主体性を育む保育は、子どもが社会を生き抜くための課題解決力を養うことにもつながります。

さらに、 人に言われたからやるのではなく、自分の意志で動くため、責任感も育ちやすくなるでしょう。

子どもの主体性を育むデメリット・課題

主体性を育む保育にはさまざまなメリットがありますが、保育の現場にとっては負担が少なくありません。

主体性を育む保育では、子どもの試行錯誤を待つことが大切です。しかし、そうなると、ひとつの活動に時間がかかりやすく、スケジュールが予定通りに進まないことがあります。

また、自由度が高い分、子ども同士のトラブルも増えやすくなります。トラブルを回避するにはきめ細やかなサポートが必要であり、保育士の負担が増えやすい側面があるのです。

こうした課題を解消するためには、「見守り」にも一定のルールを設けることが大切です。たとえば、トラブルが発生したときには本人たちだけに任せず、そのときに得られる学びを大切にしながら、適宜仲裁することも求められます。

子どもの主体性を育む保育の実践方法

ここからは、主体性を育む保育を実践するための、具体的な方法を解説します。

一人ひとりの個性を尊重する

従来の「管理的な保育」から「主体性を育む保育」に切り替えるためには、「こうあるべき」という考えから脱却することが重要です。

子どもは一人ひとり、好きなこと、得意なこと、成長のペースが全く違います。「みんな同じ」を求めるのではなく、その子が今何に興味を持っているかを大切にすることが、主体性を育てる第一歩です。

たとえば、園児のなかには外で活発に遊びたい子もいれば、静かに絵本を読みたい子もいます。大人の都合で一斉に同じことをさせる時間を減らし、その子が「自分は自分のままでいいんだ」と感じられる環境を作りましょう。

一人ひとりの「好き」を否定せず、個性を認めることが、子どもの自信とやる気を育てます。

選択肢を与える

「自分で決めた」という感覚を持てるよう、なるべく本人に決めて行動してもらうことが重要です。大人があらかじめなんでも決めるのではなく、子どもたちの気持ちを尊重します。

このとき、何もないところから「どうする?」と聞くのではなく、具体的な選択肢を出すのがコツです。

たとえば、「お散歩に行く?それともお部屋で遊ぶ?」といったように選択肢を与えると、何をするか決めるハードルが低くなります。

見守りの姿勢を大切にする

子どもの主体性を育むためには、忍耐力が欠かせません。子どもが何かに取り組んでいるとき、大人はつい先回りして「こうやるんだよ」と教えたり、手助けしたくなったりしますが、そこをぐっとこらえて見守ります。

子どもが失敗しそうになっても、安全に問題がなければあえて見守ることが大切です。

自分の力で最後までやり遂げたとき、子どもは大きな達成感を味わい、「次も自分でやってみたい!」という意欲が湧いてきます。

遊びの種類別にコーナーを作る

保育室の中に、遊びの内容に合わせた「コーナー」を作るのもおすすめです。たとえば、絵本のコーナー、ブロックのコーナー、おままごとのコーナーというように、場所を区切って整えます。

これにより、子どもは「今は何をしたいか」を自分で判断して、遊びやすくなります。

また、使ったものをどこに戻せばいいかも分かりやすいため、片付けまで含めて「自分でやり遂げる」という習慣が自然と身につくでしょう。

年齢別の実践例

0歳から2歳までの時期は、「自分でやりたい!」という気持ちの芽生えを大切にしましょう。

たとえば、食事の場面では、保育士が全部食べさせるのではなく、子どもが手づかみ食べをしたり、スプーンを持とうとしたりする動きをサポートします。食べこぼしてしまっても、「自分で食べたいんだね」と見守ることが重要です。

一方、3歳から5歳までの時期は、「自分で考え、友達と協力する」姿を目指します。

たとえば、みんなで遊ぶときは、保育士がやることをすべて決めるのではなく、子どもたち同士で「今日は何をして遊ぶか」を話し合ってもらいます。

また、工作を楽しむときは、画用紙やハサミなどの道具を配るのではなく、自由に使える場所に置いて、必要なときに自分で取りに行けるようにしましょう。

「主体性を育むこと」と「わがままを許すこと」の違い

「主体性を育むこと」と「わがままを許すこと」は似ているようで、まったく違います。

主体性を持つとは、自分のやりたいことに目的を持ち、ルールや周りの環境を理解した上で行動することです。たとえ思い通りにいかなくても、「じゃあ次はこうしよう」と自分で折り合いをつけたり、工夫したりする力を含みます。

一方、わがままとは、周りの状況に関心を持たず、自分の感情や欲求だけを押し通そうとすることです。

自分自身の目先の満足が中心で、ルールや他人の存在が抜け落ちてしまいます。主体性を育む保育においても、子どもの要求をすべて受け入れるのが正解ではありません。

「お友達が使っているから、終わるまで待とうね」という社会のルールを伝え、その中で「じゃあ待っている間は何をして遊ぶ?」と自分で考え、納得して動けるように導くことが重要となります。

主体性を育む保育は小学校教育とのギャップが起こりやすい

主体性を育む保育を受けた子どもは、小学校入学後にギャップを感じる場合があります。

主体性を育む方針の保育園では、活動の中で子どもたちが主体性を発揮できる環境作りがされています。一方、小学校では「決められた時間」に「全員で同じこと」を学ぶスタイルにガラリと変わります。

そのため、自由度の高い環境に慣れた子は、授業中にみんなと同じように座り続けることに窮屈さを感じたり、指示待ちの場面で戸惑ったりすることがあるでしょう。

しかし、主体性が育まれている子は「なぜこれ(授業や集団行動など)が必要か」を理解すれば、意欲的に取り組む力も持ち合わせています。

保育士自身にも主体性が必要

主体性は子どもたちだけではなく、保育士にとっても身につけたい力です。

  • なんとなく去年の子どもたちと同じ活動をしている
  • 毎年同じような行事をしている
  • 保育環境について気になる点はありつつ、改善を働きかけたことはない

このように、「いつも通り、これまでと同じやり方」を「なんとなく」で選んでしまうことは多いものです。

一方、保育士自身が主体性を持ち、日常の活動や行事、環境整備についても自ら積極的に意見を出せるようになれば、保育の質の向上につながります。子どもたちと一緒に、ぜひ保育士さん自身も主体性を身につけてみてください。

まとめ

主体性を育む保育は、子どものやる気や自信を育みます。自分で考えて行動する力を育てるには「見守り」の姿勢を大切にしながら、子どもたち一人ひとりの個性を尊重することが大切です。

しかし、主体性を育む保育は、保育士に忍耐力が求められ、物事が予定通りに進みにくいなどの課題もあります。現場の保育士だけに負担がかからないよう、園全体でどのように取り組むべきか検討していくことが重要です。

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