
こんにちは、田村ますみです。
暑さのピークを迎える8月。子どもたちも少し疲れが見えはじめ、保育士たちも心身ともにすり減ってきている時期かもしれません。そんな中、現場の園長先生や主任保育士さんから、こんな声が届きました。
「若手保育士が“保護者対応が苦手で辛い”と泣いてしまいました」
「“子どもは好き。でも保護者とは関わりたくない”と話す保育士がいて…」
──このような言葉を聞いたとき、皆さんならどう声をかけますか?
目次
“関わりたくない”の奥にある「本音」に気づく
「関わりたくない」──その言葉は、一見突き放すようにも聞こえますが、実は“自分を守るためのSOS”であることが少なくありません。
たとえば、こんな背景が隠れていることがあります。
- 保護者の言葉に傷ついた経験がある
- 言いたいことをうまく伝えられず、誤解されたことがある
- 頑張ってもうまくいかず、自信を失っている
- 失敗したらどうしようと、不安でいっぱい
このような“心の傷”や“怖さ”が、「関わりたくない」という言葉になって表れているのです。

「まず、保育士の心に寄り添う」ことが支援の第一歩
保育士が「保護者対応が怖い」と感じたとき、そこに「怖がらずに頑張って!」とだけ伝えても、状況はなかなか変わりません。なぜなら、“対応できるスキル”が足りないのではなく、“安心して失敗できる土台”がないからです。
園長やリーダーに求められるのは、「それ、怖かったね」「つらかったね」と、まず感情に寄り添う姿勢。
そして、「じゃあ、一緒にどう乗り越えるか考えよう」と伴走すること。実は、これは保護者支援と同じなんですよね。
職員が「安心して練習できる環境」が鍵
では、具体的にはどう支えていけばいいのでしょうか?
以下のような環境づくりが効果的です。
① 保護者とのやり取りを「見える化」する
たとえば…
- 想定される保護者の質問と、それに対する答え方の例を共有する
- 「よくある場面集」を作って、一緒にロールプレイングしてみる
“知らないから怖い”“どう言えばいいか分からない”を解消するだけで、かなり気持ちはラクになります。
② 「失敗しても大丈夫だよ」と伝える土壌をつくる
「それ、ちょっと伝え方がきつかったかもね。次はこうしてみようか」と、“評価”ではなく“フィードバック”の文化を根付かせていくことが大切です。そのためには、園長やリーダー自身が「自分も失敗したことがある」と話すことも有効です。

支援する側も、支援される側であっていい
園長や主任の皆さんも、支援する側でありながら、「どう伝えたらいいか分からない」「うまく関われているか不安」──そんな気持ちを抱えているのではないでしょうか。
だからこそ、「相談してもいい場」「気軽に立ち寄れる場所」があることは、とても大事です。
私のところにも、「職員の気持ちが分からなくて悩んでいる」「自信がなくて動けない」といったご相談を、園長先生や主任の先生から多くいただきます。
支援は“上から与える”ものではなく、“支え合う”ものです。
最後に:園全体が「つながる」ことを目指して
保護者支援に悩む保育士。
その育成に悩む園長・主任。
どちらも“孤独”になってしまったとき、問題は深刻になります。でも、「一緒に考えてくれる人がいる」「分かってくれる人がいる」と感じられたとき、現場は驚くほど変わっていきます。
今、あなたの園では、職員の“本音”が話せる時間、ありますか?
園長・主任であるあなた自身も、“本音”を話せる相手、いますか?
そんな問いから、現場の支援のあり方を見直す機会になれば嬉しいです。
私自身も、日々の支援や研修を通じて、現場に“対話の風”を届けていきたいと思っています。気になるテーマがあれば、ぜひお気軽にご相談くださいね。「うちの職員にも伝えてほしい!」というリクエストも大歓迎です🌿
次回【第6回】では、“「モンスターペアレントかも」と思ってしまう保護者への対応”についてお届けします。 お楽しみに!
プロフィール:田村ますみ(たむらますみ)

保育園の育成トレーナー・研修講師として、保育士のスキルアップやチーム力向上を支援。園長経験を活かし、現場で役立つ実践的な研修を行う。自身の子育てや、不登校の子を支えた経験を通じ、保護者対応や子どもの心に寄り添う関わり方を伝えることが得意。一般社団法人「チェリッシュ」代表として、子育て支援にも尽力。
コーチングや心理学の専門資格を持ち、保育士が自信をもって子どもと向き合える環境づくりをサポートしている。